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花と散る

1: こころ☆2017/09/17(日) 22:47:28 HOST:kd027095037062.ppp-bb.dion.ne.jp
まさかあんなヤツに、
あんなヤツのせいで───!!!

「無様ね」

うるさい、うるさいうるさいうるさい!!!

彼の手の温もりが忘れられない。

返して、私を返して!!

*
3月中旬、ちらちらと咲き始めた桜よりも早く、私は散った。


2: こころ☆2017/09/17(日) 22:53:51 HOST:kd027095037062.ppp-bb.dion.ne.jp
4月、桜の咲き誇る校庭の地面を、真新しい私のローファーが軽やかに踏む。

新品の可愛い制服は私をより一層際立たせ、眩しい太陽の下で私に視線が集まる。
「誰?あの子」
「リボン赤だから、新入生だよね?かわいー」
「え、超かわいくね?」
「バカお前、新入生怖がらせちゃダメだろ」
そんな声が聞こえる。

そう。私、木城 ももは誰よりも可愛い。小学生の頃からこの外見でたくさんちやほやされてきた。
それ故に、私は人を愛する心だとか慈悲の心なんて一ミリもない。告白はたくさんされてきたが、誰一人相手にしない。つまらないからだ。あんな奴らに、私の心を動かすことなんてまず不可能。他の女子も、私より可愛くないのに一生懸命恋しててバカみたい。
滑稽なクラスメートを嘲笑い、私は輝かしい義務教育の六年間を終えて中学生になった。


3: こころ☆2017/09/17(日) 22:57:28 HOST:kd027095037062.ppp-bb.dion.ne.jp
地元の中学なんて制服が死ぬほどダサかったので、親に頼み込んで公立の中高一貫校を受験した。幸い頭は良かったため突然に決まった入試でも難なく合格、その上高校までのエスカレーター式だ。これ以上に自分の知的な面を誇りに思ったことはない。

これから最低でも3年間過ごすという場所が、可愛くない制服なんてまっぴらだ。私は私の可愛さを極限まで生かして周りを見下す立場に在りたい。そのためにわざわざ知らない人ばかりの中学を選んだ。

ここなら私を知る者は誰もいない、完全に支配できる!
私はニヤリと笑って、「入学おめでとう」と鮮やかに彩られた昇降口を通った。


4: こころ☆2017/09/17(日) 23:03:10 HOST:kd027095037062.ppp-bb.dion.ne.jp
「えっ…」
私が教室に入った瞬間、クラスがしんと静かになった。
「…」
軽く笑って自分の席を確認し、座る。私が通る道を恐れおののくように周りの生徒が退く。
あぁ、気分がいい。
私は背中にゾクゾクくる快感を覚えながら鞄を下ろした。

「うそ、超かわいー」
「私あの子と席近いんだけど!比べられちゃうよ〜」
「顔ちっさ!」
フン、あんまバカにしないでよね。
あんた達とは意識の高さが違うのよ。まず生まれた時点で女神と糞くらいの素晴らしい差がついてるんだから、比べること自体失礼極まりないっつーの。
心の中でとことん毒づいていると、「ねぇ」と声をかけられた。

ポニーテールの割と可愛い子だ。いや勿論私の方が可愛いんだけども。
「名前なんてゆーの?」
「木城ももだよ、よろしくね」
こういうちょっと気の強そうなタイプの人間でも、私が微笑んで手を差し出せば、ほら。
ニコニコ笑って手を握ってきた。やだ、めっちゃ手汗かいてんじゃん。まあこの私と握手できるんだから緊張するのも無理ないか。


5: こころ☆2017/09/17(日) 23:20:24 HOST:kd027095037062.ppp-bb.dion.ne.jp
「あたし、橘愛那」
「あいなちゃんね、可愛い名前」
「ももの方がかわいいでしょ!」
早速呼び捨てとか、私と仲良くなってお零れをもらおうって下心が丸見え。腹の底で笑いを堪え、「そうかなー?」と愛想笑いで誤魔化す。
あぁ、とりあえずこいつと仲良くしてればいいかな…そう思って周りをチラリと見ると、みんなの視線が私に集まっていた。

皆一様に、私に話し掛けるか話し掛けまいかと悩むような表情で口をもごもごと動かしている。
全然知らない世界に飛び込むと、小学生の頃のクラス替えとは違うんだな…と軽く納得し、
「ねえ、みんなどこ小?」
と笑いかけた。

「木城さん!帰り暇?」
「ももちゃーん俺らと帰んね?」
「お前なれなれしくねー?」
「いーだろ!」
下校の時刻になった途端、クラスの男子に囲まれた。
「あ、いや、ちょっ」
男子が壁になって完全に周りが見えない。おまけにだんだん近づいてきている。うわーどんだけ飢えてんだよ、と内心呆れながら焦っているフリをしていると、
「どけよ」
冷たく、低い声が聞こえた。

「───お前ら邪魔、こんな女一匹に何集ってんの」
「…はっ?」
感情のままに小さく声に出してしまい、慌てて取り消すように口を押さえる。幸い誰にも聞かれていなかったようだ。皆私の後ろに視線を集めている。
誰だよ…と振り返ると、背の高い顔の整った男子が冷めた目でこちらを見ていた。
「…っはー?なんだよ平谷、お前ももちゃんに興味ねーのかよー?」
「当たり前だろ、俺は急いでんだよ。退け」
話しかけてきたおちゃらけた男子を手で退かせ、平谷と呼ばれた男子はスタスタと教室から出て行った。


6: こころ☆2017/09/17(日) 23:28:04 HOST:kd027095037062.ppp-bb.dion.ne.jp
「…平谷、くん?」
「あー、そうそう。あいつ同じ小学校だったんだけど愛想ねーんだよなー。で、ももちゃん、俺と」
「いや俺と」
「いーや!俺だろーももちゃん!?」
下らない争いに無意味さを感じ、私はスマホを取り出した。
「…あっごめん!ママが迎えにきてくれるみたい」
「えっマジかー」
「じゃあ今度帰ろー!」
「木城さん家って金持ちそー」
男子にバイバイと笑って手を振り、周りにいた女子にも別れを告げ、誰もいなくなった教室で私は大きくため息をついた。
「っはぁあああああー!!?」
いや、ため息というより愚行だ。

「なんだあいつっ!!平谷ァ!?そもそも誰だよ!!!!」
家に帰り、自室のベッドで熊のぬいぐるみを抱きしめながらジタバタする。
「今日一日私に話しかけてこなかったっつーの?!頭おかしいんじゃない!?ちょっと自分の顔が良いからっていい気になってんじゃねえぞ!!女に興味ないクールな自分に酔ってんじゃねーの?はぁ!?」
一人でキレて地団駄踏んで、我に返った頃にはもう5時半だった。
「うわヤバ…」小さく呟くと、コンコンとノックの音が聞こえた。


7: こころ☆2017/09/17(日) 23:35:14 HOST:kd027095037062.ppp-bb.dion.ne.jp
「ももちゃん、イライラは収まった?」
開かれたドアの先にはふわりとした白いワンピースに身を包む母の姿。お洒落で美人だ。まあそりゃそうだろう、私がこんなに可愛いんだから遺伝子は一部同じ筈だ。
「収まってない」
ふくれっ面でそう言うと、母は苦笑して私の部屋に花瓶を置いた。
「…チューリップ?」
「そうよ、可愛いでしょう?」
花瓶に生けられたのは、薄いピンクのチューリップだった。
「ピンクのチューリップの花言葉は、″誠実な愛″、素敵よね〜」
頬に手を当てて笑顔のままため息をつく母に「わかったから出てって」と言って、えー?と文句を言う母を追い出した。

「…何が誠実な愛よ、バカじゃないの」
誠実な愛なんて、ない。
みんな一時の感情を「愛」だと決めつけてるだけなんだ。


8: こころ☆2017/09/18(月) 14:22:44 HOST:kd027095037062.ppp-bb.dion.ne.jp
私の母は、私が6歳の頃に離婚した。
今でも鮮明に、記憶に刻まれている。
真夜中、リビングから怒鳴り声や何かが壊れる音が聞こえた。一人っ子なので誰にも縋ることができず、恐る恐るリビングを覗くと母と父が喧嘩していた。

父はその整った顔を酷く歪ませ、何か大声で罵声を浴びせている。母は涙目になりながら叫んでいた。
「もものことはどうするのよ!?」
自分の名前が出たときの緊張は、特に覚えている。
「知るかっ!!お前の子だろう!?」
「あなたの子でもあるでしょう!?ねえ私達、あんなに愛し合っ…」
「お前なんか愛してない!!」
父の一言で、母が吹っ切れたように膝からガクンと落ちた。
「…一時の感情を愛だと決めつけるな」
静かに言った父は、荷物を持ってリビングを出た。
「…あっ」
その時出くわしてしまった。隠れればよかった。逃げればよかった。でも怖くて、足が動かなかったのだ。
「──もも」
父は悲しそうな、悔しそうな表情で私の肩を掴んだ。

「ももは、可愛いから」
「ももなら、ママを支えてやれる」
「愛情なんかに揺さぶられるな。人が言う愛は、一度感じた誰かに縋りたいという淡い幻想なんだ」

父の瞳が、忘れられない。
私はただ呆然と去り行く父の背中を見つめ、静かに閉ざされたドアをただただ見ていた。


9: こころ☆2017/09/18(月) 15:19:42 HOST:kd027095037062.ppp-bb.dion.ne.jp
その後私は泣き崩れる母を横目に静かに自室へ戻り、部屋に置かれた等身大の鏡を見た。

何かと可愛いと褒められ、父が買ってくれたこの鏡。
映し出された自分の顔など、何十回も見てきた。
「────」
でも、その日が初めてだった。




自分を可愛いと思ったのは。

*
そんな昔のことを思い出しつつ、婚約者に捨てられたというのに愛だのなんだのと暢気な母に呆れもし、私はチューリップを見つめた。

誠実な愛だって、いつか枯れるのだ。


10: こころ☆2017/09/18(月) 17:58:34 HOST:kd027095037062.ppp-bb.dion.ne.jp
次の日、私はチェックの制服に身を包み学校へ向かった。
朝の電車がちょうどいい時間に一本しかないので、これを逃すと遅刻してしまう。
昨日初めてきたばかりの制服はまだ私の肌に馴染まず、私服だった小学生時代に比べて酷く重苦しい。
私は鞄からSuicaを取り出し、駅のホームへ駆け込んだ。


学校に着き、教室へ向かう道すがら、見知らぬ男子生徒数人に話し掛けられた。
「ねえ君、木城ももちゃんだよね?」
「やっぱかわいー!」
全員、ネクタイの色は青。3年生のようだ。
「はっはい」
とりあえず知らない先輩に話しかけられて戸惑う新入生でも演じとくか。私は手で口元を押さえ、不安げな演出を務めた。
「今日の放課後暇?俺らと遊び行かない?」
「あ、いや──あの…」
困っているフリをしていると、側に居た緑のリボンの…2年生と思われる女生徒がヒソヒソと話しているのが聞こえた。
「やば、あの人たち3年で一番人気のグループでしょ?」
「そうそう、めっちゃ告られてるらしーよ」
「あの1年生、すごーい」
やっぱりね。そんなことだろうと思った。
こいつらの外見は悪くない。結構いい方だ。でもだからって私が釣られると思うなよ。
「すみません、寄り道は禁止されていて」
一番前にいた男の、笑顔はそのままだが眉毛がピクリと動いた。生意気な、といったところだろうか。勿論私はそんなバカじゃない。
「でもお誘い、嬉しいです、先輩。今度機会があれば是非お願いしますっ」
こうして可愛い笑顔で首を傾げれば、ほら。
デレデレしちゃって、「もちろん!」とか鼻の下伸ばしちゃって。ほんと男ってバカみたい。


11: こころ☆2017/09/23(土) 20:52:37 HOST:kd027095037062.ppp-bb.dion.ne.jp
3年生のフロアを横切ったとき、不意に誰かに腕を掴まれた。
「…なんですか?」
青いリボンの女子生徒数名に囲まれ、私はトイレに連れて行かれた。
「貴方さぁ、木城もも?だっけ?」
「…そうです」
「やっぱりぃ!噂通り可愛いのねぇ!…」
急に黙り込んだ3年の顔から、フッと笑顔が消えた。
うわ、こんなあからさまに表情変える奴実際にいるんだ。中二病かよ。表情すぐ変わる普段から作ってる自分に自惚れてそう。それでいて周り見下してそうだから困る。日常つまんないとか思ってそうだなー。

睨まれていることなんかとっくに忘れて心の中で嘲笑していると、不意に3年の手が伸びてきた。
「きゃっ」
余裕で避けて、怯えたような瞳で見つめる。
「な、なんですか…」
「あんた、1年のくせに生意気なのよね」
いやいや。進学して二日目に、関わってもいなかったのに生意気なんて決めつけるのはどうかと思うけど。
「私のカズくんに手出したんでしょ?知ってんだからね?さっき廊下で話してたでしょ」
流石にそれは決めつけすぎでしょう。会話聞いてなかったんかい。ていうかカズくんって誰やねん。そもそもお前付き合ってないだろ。片思いのくせに威張るなよ。
「ほんとさぁ自分が可愛いとか思ってんの?勘違い乙なんだけどー!!」
だって可愛いもんは仕方なくない?実際可愛いんだから。これで「可愛くない」とか謙遜したらそれも逆手に取って悪口言うんだろ。どうすればいいのって話なんですけど。
「なんか言えよっ!!」
心の中で突っ込みを入れまくっていたら、突き飛ばされてしまった。が、倒れることもなくバランスを取る。

ハッ!!私の体幹なめんじゃねーぞ!!こちとらてめえらみたいな生ぬるい生活送ってるわけじゃねえんだよ!しっかり鍛えてる体を軽く見るんじゃねえ!!!!

だんだん心の文句が暴走し、声に出そうになる。それを必死に押さえ、
「すいません。私もう行かなきゃいけないので、お話は後日でいいですか?」
鞄を持ち直してそそくさと出て行く。
「ちょっ、待てよ!!」
捕まえようと手を伸ばしてきた3年に向かって、
「あとカズくんって誰ですか?あなた彼氏いないでしょう。自己満足ですか?自惚れるのも大概にしてくださいね」
図星だったようだ。私は顔を真っ青にして棒立ちする3年とその取り巻きに手を振って教室へ向かった。


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