| 「…ん…」 目を覚ますと五つの枕が俺の左右に並んでいる。そこには誰もいない。 重い体をゆっくりと起こし、廊下を歩く。恐ろしいほど静かだ。
「…おはよう」
『おそ松兄さん遅い、今何時だと思ってんの!?』 「いや〜、せっかくの休日だしゆっくり……………………」
声の聞こえた方向には誰もいない。 ただテーブルが一つ寂しげに置かれているだけ。 いつもならあいつらが………………。
思い出したくない3日前の記憶。
頭によぎるあの光景を強引に飛ばし、先にある家族の前に座る。
「おはようカラ松、チョロ松、一松、十四松、トド松、母さん、父さん…。」 手を合わせ目を閉じ、ゆっくりと家族の名前を呼ぶ。 目を開くと同時に涙が溢れてきた。
「っ……なんで、なんで……」 なんであの日にあんなこと。 なんで。どうして。 なんでこいつらは死んだんだ。 なんで。
どうして…
どうして俺だけ生きてるんだ。
「お兄ちゃんを構ってくれよ…母さんも父さんも……暇なんだよ…寂しいんだよ………っ」
綺麗に並べられた八個の写真を抱き締める
小さい、冷たい、なんの温もりも感じない家族の写真。 止まる気配のない涙。
静かな部屋の中で泣き崩れる一人の男。
松野家長男松野おそ松。
今日もただ一人生きて行く。
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