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 歪。 

1:  Yoshi ☆2016/05/29(日) 19:07:54 HOST:softbank221057075136.bbtec.net

「 死ね死ね死ね…。
 みんなみんな…しんじまえぇ… 」

始まりは、母親からの酷い虐待だった。

幼い頃からそれをされ、
すっかり性格が歪んでしまった馨。

馨はある日、初めて友達ができた。
久しぶりに嬉しいという気持ちを実感できた。
そこから元の生活に戻っていった。

だが、ある時母親が戻ってきたのだ。
そこからまた、あの幼い頃の辛くて苦しい思い出が甦ってしまった。


化け物になってしまった馨は、
もうどうすることもできなくなってしまった____


2:  Yoshi ☆2016/05/29(日) 19:09:50 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


始まり




3:  Yoshi ☆2016/05/29(日) 19:17:45 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「 馨(Kaori)、っていうのよ 」

2×××年8月3日。
出産を無事終えた女が笑顔で友達らしき人物の質問に答えた。

「 馨…いい名前ね 」

言われると、女はウフフ、と当然でしょ、と言った。

「 一生懸命考えたのよ。綺麗な響きでしょ? 」

「 そうね 」


女たちの話し声は、静かな病院内に響きわたった。



4:  Angel ☆2016/05/30(月) 05:59:10 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


間もなく馨が退院する頃。
女はたくさん馨に話しかけたり、ミルクをあげたりして馨を喜ばせてあげようと思った。
しかし、期待がはずれ馨は泣いた。
馨の泣き声はそこら辺の赤ん坊の泣き声より大きいため、周りから白い目で見られた。


「 か、馨…落ち着いて。ねっ? 」


そんなことを言っても退院したばかりの赤ん坊に言葉なんかわからない。
馨はずっと泣き続けた。


「 よしよし、よしよし… 」


母親になるということは、こんなに神経を使うんだということを女は実感した。
___そしてまもなく月日が立ち、馨は2歳の誕生日を迎えた。


5:  Angel ☆2016/05/30(月) 06:04:17 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


しかし、馨は誕生日を祝ってもらえなかった。
完全に子育てに飽きられていたからだ。
言うことは聞かない、ワガママばかりの娘。
こんな性格の子なんて望んでいない。
女はそう思っていたのだ。
だから、娘の誕生日だってどうでもよくなっていた。
ケーキなんてめんどくさい。
蝋燭用意するのもめんどくさい。
全てがめんどくさかった。


部屋の隅で一人、ぬいぐるみに話しかけている馨の頬に涙が伝った。



6:  Angel ☆2016/05/30(月) 06:10:28 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「 ねえミッキー。
 どうしてママはたんじょうびをいわってくれないの?
 みんな、いわってもらってるのに…。
 なんで?なんで?なんで… 」


ブツブツとぬいぐるみに話しかけている馨を見て、女は腹を立てた。


「 うるさい!ちょっと黙ってろ! 」


女はちょうど好きな朝ドラを見ていたので、邪魔になるからと怒鳴った。
馨は黙った。
つぶらだった瞳が、みるみるうちに鋭く変わっていく。
やがてそれは女を見た。


「 ひどいママだよね、ミッキー 」


馨は涙をポロポロ流しながらそう言った。



7:  Angel ☆2016/06/03(金) 05:41:56 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「 はっ?今何て言った? 」


女は振り向いた。
馨は女の鬼のような表情に怯えた。
怖くて何も言えなかった。


「 何て言ったって聞いてんの! 」


女は苛立ちを感じていた。
_子供なんて、ちっとも可愛くない。
母親の私に怯えるなんて何様?
他の親たちはたくさんたくさん甘えられてるのに。
何がいけなかったの?育て方を失敗したの?
_違う。今まで叩いたことなんてなかった。
なのに…!
どうして私を避けるの。



8:  Angel ☆2016/06/03(金) 05:48:57 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


女は心の中で馨に中傷的な言葉を吐き続ける。
その時、馨が震えながら口を開いた。


「 み…ミッキーに…け、ケーキが…たべたい…って… 」


女はすぐに馨の言ったことが嘘だとわかった。
馨の一言に『ママ』という単語が入っていたのがわかっていたからだ。


「 それ、嘘でしょ?本当のこと言って 」



「 えっ…。う、うそじゃ……ないよ 」


女はさらに苛立ちを感じてきた。
_まったく。この子は嘘をつくいけない子になってしまったわ。
…そうだわ。悪霊がこの子にとりついているんだわ。
追い払わなくちゃ…ね。


9:  Angel ☆2016/06/03(金) 05:57:03 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


女はそう決意すると、近くにある本を手に取った。
馨はこれから何が起きるのがわからないのか、きょとんてしている。
_いい子ね。こんなに大人しくしてるなんて。
こんな悪霊初めてだわ。
女は狂っていた。


「 …悪霊…退散!! 」


女な叫ぶと、馨の頭を本で叩いた。


「 いやだー!!いたい!ママ!やめて!! 」


馨は必死で叫んだ。
が、女は狂っているので言葉なんか聞かなかった。


「 何言ってんの!あんたの中の悪霊が消えるんだよ!
 悪霊が消えるんだよ?満足でしょ! 」


馨は女の言葉が理解できなかった。
あくりょう?まんぞく?
何…それ。意味がわからない。
馨は叫ぶのをやめて、大人しくなった。



10:  Angel ☆2016/06/04(土) 20:44:39 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


親が怖いと馨が思い始めたのはこの時からだった。
ついに耐えきれなくなり、馨は意識を失った。
少したち、ようやく女は落ち着いた。それと同時に、馨の様子がおかしいことにも気が付いた。
なかなか動かず、呼びかけても返事がなかった。
寝ているのかと思ったが、叩いてもつねっても起きない。
まさかと思い、脈や心臓の動きを確認してみた。
だが、ちゃんと動きはあったので女は安心した。


「変な心配かけさせないでよ」


女は溜め息をつき、馨をほったらかしにして外出した。
行き先はレストランだ。つい最近できた恋人と行くつもりである。
離婚したばかりの女は、新しい男を探そうと思い、ネットで相手を探した。
そしてようやく自分の好きな男を見つけた。男は無職である。
そんな男を可哀想に思い、喜ばせてあげようと女はレストランに誘ったのだ。
実際に会うのは今日が初めてだ。



11:  Angel ☆2016/06/04(土) 22:03:50 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


だから、女は男のことで頭がいっぱいになっていた。
馨のことはすっかり忘れていた。意識がなくなっていたこと。顔色が悪くなっていたこと。
女は馨のことなんかもうどうでもよくなっていた。
自分の子供でも、気に入らないものは気に入らなくなったのだ。


「どんなイケメンかなあー」


女はわくわくしながらレストランへ向かう。
その姿がある人影の目に写った。その人影は_。
あの一緒に病院へ行った女の友達だった。


「…詩子さん?」


人影が呟く。
そう、女の名前は詩子である。影山詩子だ。
詩子はすぐ後ろに友人がいるなんてことは思いもしなかった。
友人は詩子の後を追った。少しびっくりさせてやろうと思っていた。



12:  Angel ☆2016/06/04(土) 22:13:32 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


詩子はレストランに入ると、待ち合わせ相手の男がいないか探した。
中年の男、それに子供連れ夫婦が多め。どうやらまだ来ていないようだった。
仕方なく、詩子は空いている席に座って待った。髪は乱れていないかを、手鏡でチェックした。
すると_。
カラン、と音がした。詩子はやっと来た、と心臓の音を高鳴らせた。だが、違った。
友人だった。しかし、詩子は今入ってきたのが友人だとは気付いていなかった。
友人はこの時を待っていたかのように、ゆっくりと詩子に近付く。
そして口を開いた。


「詩子さん」


そう声が聞こえた。
詩子は聞き覚えのある声だなと思い、声のするほうを見た。
そして「えっ!」と声をあげてしまった。友人がいたからだ。


「え、嘘、え…!」


「…フフフ。びっくりした?
 ちょうどレストランの前で見かけたの。
 だから、驚かせてやろうと思って」


友人は意地の悪い笑みを浮かべた。
だが、期待ははずれた。



13:  Angel ☆2016/06/05(日) 11:47:53 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「…何で此処に来るの?」


「え?だから驚かせてやろうと思って」


「はあ?空気読んでよ..…!
 これから彼氏と会うっていうのに…!
 変な勘違いされるかもしれないじゃない!」


詩子に注意され、友人は驚いた。
まさか注意されるとは思ってもみなかったからだ。
普段の詩子なら、「何よ、もう」と笑って済んでたのに。
後、「彼氏」という一言で一瞬耳を疑った。詩子には夫がいたはず。
…まさか不倫をしているのでは。
友人はその事を詩子に尋ねようと思ったが、入ってきた男が横切り、そっちに視線が行ってしまった。
男は詩子を見て微笑む。


「えっと…貴方が影山さんですか?」




14:  Angel ☆2016/06/05(日) 12:01:14 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「え…?」


あまりの男の格好よさに、詩子は頬を赤く染めた。
男はふっと笑った。


「俺ですよ」


男が言うと、詩子は目を見開く。


「え!う、嘘…!貴方が…!」


詩子は思わず手で口を押さえた。
こんなに顔のレベルが高いとは思っていなかったのだろう。
嬉しくて、とうとう涙までもが出てしまった。


「あ…大丈夫ですか?」


男が訪ねると、詩子は「うん…!」と涙を拭いながら言った。


「わ、私……こんなに格好いい人と付き合えて…幸せ…。
 離婚した夫は……女癖は悪いし…髭も中々剃らないしで…あんまり好みじゃなかったの…。
 だから…っ…私…私……!」


「離婚」という単語が詩子の口から漏れ、友人は納得した。そうか、離婚していたのか、と。




15:  Cross ☆2016/06/05(日) 15:17:08 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


周囲がざわざわし始める。中には白い目で2人を見ている人もいる。
そんな中で2人はぎゅっと抱き締め合っていた。
友人は自分がとても場違いであるということを思い、すぐさまレストランから出ていった。
その姿を、老人の店員は変な目で見ていた。






16:  Cross ☆2016/06/05(日) 15:30:20 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


どれくらいの時間が経ったのだろうか。
2人は何かを注文する気配はなく、まだ抱き締め合っている。
そしてようやく2人は互いに手を離した。

「ありがとう…。あの…本名は何ていうの?」


詩子は男に聞いた。
男はまた笑顔を作った。詩子はこの笑顔が大好きになった。


「ん、晴斗。河合晴斗だ」


「晴斗…素敵な名前」


「君は?」


「え…と、影山詩子」


「詩子か。日本人らしいね」


2人は互いに自己紹介をし、名前を褒め合った。
詩子は名前を褒められるのは初めてだった。
「日本人らしい」。その一言だけで自分の名前も好きになった。

***

馨はまだ目覚めなかった。が、手がぴくりと動いた。



17:  Cross ☆2016/06/08(水) 22:05:20 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「う…」


やがて馨は動き出した。
馨の頬は痣だらけだった。


「いたい…いたい…」


馨は寝転がったまま、しばらく悶えていた。

***


「『詩子』って呼んでもいいですか?」


河合はにっこりと詩子に微笑む。
詩子はその笑顔に見とれてしまった。
詩子はそれを自覚し、慌てて答えた。


「あっ…!はい…!私は何と呼べば…?」


「晴斗、でいいよ」


河合はそう言うと席に座った。
詩子もそれを見てすぐに座った。



18:  Cross ☆2016/06/08(水) 22:07:16 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


コドモ




19:  Cross ☆2016/06/08(水) 22:13:35 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


***


食事を終え、2人はレストランから出た。
2人は立ち止まり、黙ったままだった。何か言わなければ…と詩子は思った。
そうだ、お礼を言おう。
しばらく間を開けてから河合に言った。


「あの…今日はありがとう…!」


詩子は気付けば顔が真っ赤になっていた。
そのことを詩子は自覚していなかった。


「顔、赤いよ」


「え…!」


河合にそう言われ、とうとう耳まで赤くした。
詩子はポニーテールで耳が見えているので河合はすぐそれに気が付いた。



20:  Y ☆2016/06/12(日) 22:04:37 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


河合はクスッと笑い、詩子の頭を撫でる。詩子は照れた。


「照れてる顔も可愛い」


そんなことを言われたら……と、詩子は河合から視線を反らした。
恥ずかしかったのか、思わず下を見る。
河合はまた微笑み、


「帰ろっか」


と言った。


「え…帰るって…!」


今日会ったばかりなのに、もう同居をするなんて。
夢のような展開に、詩子は思わず声を出した。


「そんなに嬉しい?」
「うん…!」


馨のことなんかすっかり忘れていた。



21:  Y ☆2016/06/12(日) 22:09:45 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「…で、帰るのは私の家?それとも…」
「うん。俺の家だよ。君の家も見てみたいけど、まず君から俺の家を慣らしておきたいから」


愛する人との同居。こんなに嬉しい気持ちになったのはいつぶりだろうか。


「わかった…!」


詩子は思わず河合に抱きつく。
河合も詩子の背中に手をやった。


_______


「おか…さん……おかあさん……」


馨の啜り泣きは続いていた。
母を待ち続ける子。
想像するととても哀しいものだ。



22:  Y ☆2016/06/12(日) 22:16:40 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


その哀しさは馨自信にもあった。馨はまだ2歳であり、とても一人ではいられなかった。
だが、次第に母親を恨むようになった。
どうして帰ってきてくれないの…。どうして誕生日を祝ってくれないの…。
どうして一緒に遊んでくれないの…。
どうして…どうして…どうして…。
いろいろな恨めしい心が馨の脳内に詰まっていた。
そんな娘の気持ちも知らず、詩子は河合の家に泊まった。


「…いい…?」
「うん…優しくね…。初めてじゃないけど…」


詩子は有頂天だった。
こんなに幸せな時はない、と…。
もう夫なんか忘れてやろう。そんなのどうでもいい。もう夫じゃないから。


朝。


「じゃあ、また今度」
「うん…!」


詩子は帰宅した。



23:  Y ☆2016/06/13(月) 20:35:33 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


詩子は河合と離れた瞬間、とても寂しく感じた。
戻ろうと思ったが、めんどくさい娘の世話もあるからと戻るのを諦めた。
娘なんていなければ、私は今あの人と一緒に居れたのに……。
本当最悪。あんな男とも結婚するんじゃなかったし、子供も作るんじゃなかった。
色々と後悔をしたが、仕方のないこと、自分が馬鹿すぎたんだと自己解決した。


「…」


詩子は黙って家に入った。
その瞬間、ギョッとした。
室内が血の海になっていたのだ。


「ち…ちょっと…!馨…?どこにいるの…?」


詩子は一気に顔面蒼白になった。


「ね…ねぇ…!」


だが、馨の返事はない。



24:  Y ☆2016/06/14(火) 21:34:39 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


詩子は怖くなり、外へ飛び出した。


「だ、誰かーっ!誰か助けてー!」


夢中で走った。だが、周りに人影はない。
いつもはそこら辺に人が歩いているのに、こんな時に……。
しかし、人は見つかった。子供だが、頭が真っ白になっていた詩子は助けを求めた。


「たっ…!助けて…!い、家が…!わわ、私の家が…ち、血まみれなの…!」
「…?」


子供はキョトンとしていた。
詩子は子供の手をぐいと引っ張った。


「…!」
「早く…!早く助けて…!」
「ちょっ…!やめてください」


子供は詩子の手を弾くと、逃げるように走り去っていった。


「……帰らなきゃ…。馨…馨が…」


フラフラした足取りで詩子は戻った。
もしかしたら馨は誰かに…。
そう考えると怖くてたまらなかったが、勇気を振り絞ってまた家に入った。
なんと、馨の姿は向こうのキッチンにあった。



25:  Y ☆2016/06/15(水) 07:26:46 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「馨…!どこにいたの…!」


詩子が言うと、馨はゆっくりと振り向いた。顔には血が付いていた。
大怪我をしているはずなのに、立っている。


「…怪我は大丈夫なの?」


馨は黙ったままだった。
が、口を開いた。だが、声は出していない。口パクだ。


コ・レ・ワ・タ・シ・ノ・ジャ・ナ・イ・ヨ。


_これ、私のじゃないよ。
馨はそう言った。だが詩子には全く伝わっていなかった。
詩子は馨が自分に怒っていると思い、必死に謝る。


「…っ…ご、ごめんなさい…!私…あなたをずっと放置していて……。
ろくに食べ物もあげられなくて……!誕生日も…っ…祝ってあげられなくて…!
こんなお母さんでごめんなさい…!
私…っ…」


心の底から反省した。
これは自分の子供なのだ。
目の前にいる血まみれの人物。それは自分の子なのだ。
そう思うと、とても怖かった。



26:  Y ☆2016/06/15(水) 20:08:20 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


後悔の気持ちもあった。
この子をこんな姿にしてしまったのは私だ。
この子をちゃんと愛していればこんなことにはならなかった。


「ごめんなさい…馨…ごめんなさい…」


詩子は馨を抱き締めようと近寄った。
だが。
鈍い音と共に詩子はその場に倒れこんだ。
どこから持ってきたのかわからないが、馨は鉄パイプを握っていた。
血が飛び散る。馨のではない、誰かの血と混ざり合う。



____「………ママ、しね」




27:  Y ☆2016/06/15(水) 23:15:36 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


馨はそう冷たく言うと、詩子の顔を踏んだ。詩子はすでに気を失っていた。


「しね、しね、しね、しね」


何度も何度も踏んだ。
しかし、裸足だったので少ししか傷が付かなかった。
これは困った、と思い、咄嗟に馨は良い考えを思いつく。


「ほうちょうで、さそう」




28:  Y ☆2016/06/15(水) 23:22:09 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


馨は包丁を手に取り、詩子の顔めがけて包丁を降り下ろそうとした。


顔ギリギリまで刃先が来た途端、急にに馨の頭を激痛が襲った。
おそらく、詩子に殴られた時の痛みが蘇ったのだろう。


「いたいよう……いたい……ママ…」


馨が名前を呼んだ瞬間、詩子の手がぴくりと動いた。
生きていることを確認した馨は、詩子の手を握った。


「おねがい、たすけて…!」


動かなくなった。


「ねえ…!」


まだ動かない。


「うぐっ…。いだいぃぃぃ……いたいよぉぉぉ……。ママ…ママぁー……」





29: (yTYsy5wW2M)☆2016/06/18(土) 13:25:18 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


馨はそれからしばらく泣いた。泣き止んだ馨の目はパンパンに腫れていた。
__詩子はまだ動かなかった。

やがて近所の人が救急車を呼び、詩子はなんとか一命を取りとめた。


「……此処は…」
「あ!詩子さん!あなた家の中で倒れてたのよ!」
「…家の中……?」


詩子はなぜ自分が此処にいるのかを理解できなかった。


「そう!どうしてかわからないけど、家の中が血だらけでね…!
 あなたの血じゃないって、そこにいた娘さんが言ってたの…!」


娘とは、馨のこと。
けれども、詩子は少し間を開けてからこう言った。


「………娘なんて…いないわ」
「…え?」
「…そう、いないのよ」




30: (yTYsy5wW2M)☆2016/06/18(土) 13:40:37 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「…何言ってんの!いるじゃない!馨ちゃんて子が!」


天然パーマの女はそう言った。
だが、詩子はそれでも否定した。


「……かおり…?そんな子…いたっけ……」


詩子はどこか虚ろな目をしていて、焦点が定まらなかった。
そんな詩子を、パーマの女は心配した。
パーマの女は、詩子の自宅の隣人である、田川志乃だ。
どんどん周りから友が消えていく詩子を、一人見守っていた。
こんな状況になるなんて、思っていなかったのだ。
思いきって田川は聞いてみた。


「…ねえ……ここ最近…馨ちゃんの泣き声のようなものが聞こえてたんだけど…。
 詩子さん、知らない…?」
「……泣き声…。…ああ、私が……晴斗と…会ってた…時かもね」
「…はると?誰よそれ」
「最近できた新しい恋人」


それを聞いて、田川は驚きを隠せなかった。
詩子は離婚したばかりで、てっきりまだ夫のことを想っていると思っていたからだ。


「はると…そいつ何歳?」


田川はまさか若者ではないか、と不安になる。


「…知らない。でも20代だと思うわ」
「…え…!」


嫌な予感は的中した。




31: (yTYsy5wW2M)☆2016/06/19(日) 11:51:55 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「駄目!別れなさい!そんな若い子と付き合ってどうするの…!」


田川の言葉の意味を詩子は理解できなかった。
_別れる?何言ってるの田川さん。
晴斗と…晴斗と私の愛は本物。
だって昨日、愛を確かめることがちゃんとできたんだから。


「いいえ、別れないわ。別れたくもない。
私は晴斗を愛している。晴斗も私のことを愛してくれている。
だから、別れないわ」


虚ろな表情のまま言う詩子。
それを見て田川は諦めたのか、はあと溜め息をついた。


「…油断しちゃ駄目よ。きっとあなたは間違っている。
あなたなんて、その恋人にとっちゃただの金儲けのためでしかないのよ」


田川はそう言って立ち上がった。
田川の言葉で、詩子は怒る。


「はあ!?馬鹿なこと言わないでよ…!」


だが、田川は無視して病室から出ていってしまった。


「…ったく…」


_金儲けのためでしかないのよ。
詩子は田川の言葉を思い出すと腹立たしかった。




32: (yTYsy5wW2M)☆2016/06/19(日) 12:08:45 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


____***


「だーかーら!どうしてこんなことになったのかって聞いてるんだ!」


詩子の自宅には、警察が到着していた。
詩子が病もなしに倒れていたからということ、それに家の中が血の海になっていたという理由からだ。
しかし、家に居たのは詩子だけではなかった。
顔が痣だらけの小さな少女も一緒にいた。馨だ。
馨は警察が家に来る前にまた泣いた。目の腫れはさらに酷くなっていた。
馨を初めて見て、警察はぎょっとした。それから、奇人でも見るような目で馨を見た。
だが、警察が恐怖だなんて格好悪い。
そう思った警察はすぐさま、どうしてこんな状態になったかを馨に聞いた。


「…」


馨は黙ったまま下を向いていた。
警察はめげずに何度も聞いた。しかし、馨は黙ったままだった。


「…ったく!とんでもねーガキだな…」
「…おいよせよ下村。この子もまだ小さいんだよ。言葉なんて少ししか…」
「あーあー、なんだよ善人のふりしてよー。こちとら警察になんかなりたくなかったんだよ!
親父がどうしても人を助ける仕事に就けって言うからなってやったんだよ!
助けるつもりなんかねえがな!」
「は?お前ふざけんなよ」


警察らしくない警察。まさにこの人物だろう。
事情聴取なんか後回しで喧嘩をする。
馨は黙って2人の喧嘩を見ていた。


「ママとパパみたい」


ポツリと馨は呟いた。




33: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/07/31(日) 15:14:23 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「はぁ?」


馨の言葉に気付いた警察達が振り向く。
だが、馨は再び下を向いた。
警察は頭を掻いて、馨に話しかけた。


「あのね、お嬢ちゃん。お巡りさんをナメちゃいけないよ?お巡りさんはね、悪い人を逮捕してくれるんだ。
 もしかしたら、このお家を血まみれにした悪ーい人も捕まるかもしれないんだよ?
 だからさ、この事件についてわかることがあったら、もう一度言うけど話してくれないかな?
 無かったら無いでいいよ」


警察達は少しでも情報が入るようにと、今度は優しく接してみた。
その効果があったのか、馨はゆっくりと顔をあげた。
目を背けたくなるほどの醜い顔がそこにあった。


「…ない」


馨は小さな声で言った。
警察はチッと舌打ちした。


「なんだよねーのかよ。
 だったら黙ってないで素直に無いって言えばいいのによー」


捨て台詞を吐き、警察は家から出ていく。


「まー、取りあえず今度は『詩子』って人に話聞くか。
 今は花ヶ崎病院にいるみたいだし、近いしな」

「そうだな」




34: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/07/31(日) 15:27:10 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


またひとりになっちゃった。
馨は真顔で涙を流す。

さびしいよ。
さびしいよ。
さびしいよ。

だれか、たすけて。
ママ、どこにいっちゃったの?

ぜんいん、わたしをひとりぼっちにする。
ぜんいん、わたしをみすてる。

こんなの、いやだ。
だれか、わたしをたすけて。
わたしを…。


―――――――***


家が血まみれになるまで、馨は一人で泣いていた。
だが、予想外なことが起きた。


「ここじゃね?子供が虐待されてる家!」


二人の中学生が馨の家に入ってきた。
それは、都市伝説マニアの中学生二人組のようだった。


「うわあ…中ボロボロ…。
 あっ!見て!ぬいぐるみがある!」

「あ、本当だー。
 でも、今って親子どこにいるんだろ?」

「それがね…
 あれっ」


話していた中学生が馨に気付く。


「やだ!!子供いるじゃん!まさか噂の…!」




35: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/07/31(日) 15:39:45 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「あ、ほんとだ!虐待されてる子供じゃん!
 てか、親はどうしたんだろ?」

「さあねー、この子置いてどっか行っちゃったんでしょ。可哀想に」


図星なことを言われ、馨は反応した。

こいつら、わたしのいえにかってにはいってきた。
こんにちはとかいわず、はいってきた。
しつれいなひとたち。


馨は包丁を手にし、中学生めがけて走った。


「はっ!?何それ!ちょ…!逃げ…
 ぐぷっ…」

「いやああああああ!!」


ナイフは一人目の腹を突き刺した。
もう一人は甲高い悲鳴をあげ、馨を蹴った。
馨はその場に倒れた。
運悪く壁に頭をぶつけてしまった。


「やったな」


馨は鬼のような形相で中学生を追いかけまわした。
中学生は夢中で逃げた。
玄関の扉を開けようとしたが、閉まっていた。
その隙に、馨はナイフを中学生の太腿へ突き刺す。


「ぎぃ…!」


そして倒れたところを見計らい、背中をメッタ刺しにする。


「いやだいやだいやだやめてやめてやめてええええええ!!
 ああああああああああ…!!!!」


中学生は必死にもがいた。
だが、馨は容赦なく刺した。


「しぬまで、やめない」



36: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/01(月) 18:39:20 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「はぁ」


馨は殺した中学生らを押し入れの中に入れた。
それも、最近使っていない古い部屋の押し入れに。
ここなら見つからないと、馨は考えたのだ。
すると、玄関からまた足音がした。
馨はすぐに振り向いた。


「ち…ちょっと…!馨…?どこにいるの…?」


それは母である詩子だった。
馨は返事なんかしたくなかった。
返事をしたら、また叩かれる。殴られる。蹴られる。


「ね…ねぇ…!」


詩子の声が震えているのが馨にもわかった。
きっと、強盗か何かが入ったと思ったのだろう。
それでも馨は返事をしなかった。
母が怯え、家を飛び出していったのがわかった。


「ばーか」


馨はケタケタと笑った。



37: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/01(月) 18:41:07 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


新生活




38: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/01(月) 18:57:43 HOST:softbank221057075136.bbtec.net



* * *


「…」


詩子は病室の中、今までの出来事を思い出していた。
馨が血まみれの家の中突っ立っていたこと。
そして、馨に暴行を受けたこと。
河合と知り合い、付き合うことになったこと。
馨の出来事については、もうなかったことにしていた。
思い出したくもないし、あんなモンスターのような子供は自分の子供ではなかったのだ。
あの人に似てしまったのだ、あの子には自分の遺伝子なんて全くない。
全ては鬼であるあの男の遺伝子である。
自分に子供なんていなかったのだ。必死で自分に言い聞かせた。


「詩子!」


突然、聞き覚えのある声がした。見れば、目の前に河合がいた。


「晴斗…」


詩子は河合の顔を見て嬉しくなった。
入院してから全く会っていなかったからだ。
お見舞いに来てくれた。それだけで気持ちが晴れた。


「大丈夫か?頭打ったって聞いたけど…」

「あ…、うん…。頭打ったっていうか…鉄パイプで殴られたの」

「はっ!?誰に?」


聞かれた途端、馨の顔を思い出してしまう。
ううん、あれは…あいつは元から存在していないのだ。
そうだ!強盗にやられたのだ。
あの子のことは知らない。
詩子は馨の記憶を消そうと必死になった。


「…強盗よ」


自分の子供になんて言ったら、面倒なことになりそうだと思い、嘘をついた。
それだけではなく、なぜ子供があんな風になったのかは自分の責任になると感じたからだ。



39: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/04(木) 15:12:35 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「強盗!?
 ったく…とんでもねー奴だな。でも詩子が無事で良かった」


河合はそう言うと、詩子を強く抱き締めた。
詩子は、今までの辛い思いを忘れてしまいそうになった。
河合が傍にいてくれるだけで幸せだった。


「…ありがとう」


嬉しさのあまりか、詩子は涙を流した。
それを見て、河合は言った。


「…ごめんな。もっと早く見舞いに来れば良かった。
 寂しかったよな…。一人は辛かったよな…。こんな思いさせちゃってごめん…。
 でも、もう安心だ。これからずっとずっと傍にいるから」


詩子には河合の言葉が嬉しかった。ずっと背負っていた悩み。不満。寂しさ。辛さ…。
全てが破壊されなくなったように詩子は感じた。
凄く凄く嬉しかった。だから、涙はどんどん溢れ、流れた。

―しばらくの間、二人は抱き締めあっていた。




40: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/04(木) 15:21:13 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


* * *


「退院?」

「うん。明日からだって」

「…良かった」


2週間が経ち、ようやく詩子は退院を許されることになった。
詩子は、自分に娘がいたことはだんだん夢のように感じるようになっていき、やがては忘れてしまった。
娘の名前さえ、全く憶えていなかった。だから、あの出来事も忘れた。


「なぁ、退院したら一緒に暮らさないか?」

「えっ」


突然河合が同棲を勧めてくる。
嬉しかったのだが、今までに住んでいた詩子自身の家はどうするのか心配になった。


「あんな強盗が現れた家なんて捨てて俺と一緒に住もう。
 そのほうが安心できるだろ?ふたりの方が心強いし」


捨てる。
詩子は少し考えた。



41: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/04(木) 15:30:11 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


でも、確かに河合の言う通り、ふたりのほうが心強い。
一人だったころの寂しさを思い出した詩子は、すぐさま


「うん」


と言った。
そしてその翌日。詩子は退院した。
河合と詩子は喜び合った。


「おかえり」


河合が言ったので、詩子も


「ただいま」


と言った。詩子は、これから幸せが長く続く。
そう思っていた。
期待通り、幸せの幕が開いた。
河合は無職だったが、やがて仕事を見つけて働きはじめた。
詩子は主婦になった。
ああ、この懐かしい感じ。昔を思い出す。
思い出したくなかったが、思い出してしまう。
でも、全然いい。今は幸せなのだから。
詩子は鼻歌を歌った。



42: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/05(金) 15:11:34 HOST:softbank221057075136.bbtec.net



一方、馨はまだ一人ぼっちだった。衰弱していて、意識がなくなりそうだった。


「マ…マ…」


馨はとうとうその場に倒れこんでしまった。
自分の娘の存在さえ忘れた詩子は、まさか馨がこんな状況になっているとは思っていない。
自分に娘がいたなんてことさえ憶えていないのだから当たり前だろう。
馨はどんどん、どんどん痩せこけていった。
とうとう、家から出た。


「ママをさがさなくちゃ…」


馨を見かけた近所の人たちは驚いた。


「まぁ!あれ、影山さんちの娘さんじゃない?」

「なんであんなに痩せて…可哀想」

「影山さんなら、入院してるんですって。…なんでも、娘さんに怪我をさせられたらしいわ。
 影山さん、それで娘さんを手放したんじゃないかしら」

「…でも、影山さんは虐待をしていたらしいわ」

「まぁ、そうなの?」


歩く距離が長くなるたびに、馨の心はどんどんぺしゃんこに潰れていった。
そんな馨の気持ちなど知らず、近所の人は話をする。


「ママ…ママ…」


馨は限界に近かった。
そして…倒れた。心臓は動いていなかった。





43: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/05(金) 15:23:31 HOST:softbank221057075136.bbtec.net



「イくよ?詩子」

「んっ…私っ…もっ…」


詩子たちは子供が欲しかったため、作るのに一生懸命だった。
子供ができたら、結婚しようとも決めていた。
新しい結婚生活。考えるだけで詩子は胸がドキドキした。
今も十分ドキドキしているが。


***―――――



あれから7年が経過した。
詩子はめでたく出産し、子供は6歳を迎えていた。
河合も立派な父親になっていた。


「行ってきまーす!」


詩子の第二子、音羽は元気よく挨拶をした。
音羽は小学1年生になっていた。赤いランドセルが、彼女を輝かせていた。



44: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/05(金) 15:24:35 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


問題児




45: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/05(金) 15:35:07 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


詩子や河合の耳にも届いていたが、音羽の学校には問題児がいた。
その子は音羽より1つ年上の小学2年生の子だった。
なんでも、突然泣き始めたり、学校で飼っている鶏2羽を殺してしまう程なのだそうだ。
詩子も、音羽が何か危険な目に遭わないか心配だった。だが、音羽はこう言っていた。


「全然だいじょうぶ!先生がいるもん!」


その音羽の笑顔を見ると、ついホっとしてしまう。
詩子は特に気にしなかった。




「…別にいいでしょ?動物なんか殺したって。人じゃないし、平気平気」


今日も、あの問題児の声が音羽の耳に届いた。
音羽は、詩子の前では大丈夫と言ったが、実は問題児のことを気にしていた。
実際、問題児の声を聞くだけでゾッとした。
問題児は全校で噂になっていた。


「気持ち悪ィ…」

「頭おかしいんじゃないの」

「もう施設にでも行けよ」


不評や不満があちこちからも聞こえた。
だが、問題児の保護者は学校に行くことをやめさせなかったらしい。
教師たちも、問題児に不満を抱いていた。



46: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/06(土) 21:41:54 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「たくさんの命なのよ!それを奪うだなんて…」

「ハイハイ、うんざりなの。あんたのソレ。
 何?たくさんの命って。蟻じゃん、ただの」


説教する女教師の声。それに呆れている問題児。
音羽はこんな場面は見てはいけないと判断し、視線を問題児から反らして教室へ向かった。
教室の扉を開け、音羽はさっきの出来事がなかったかのように、大きな声で


「おっはー!」


と挨拶をした。


「おはよー!」

「今日、ちょっとおそかったねー」


友達に指摘された。
音羽は密かに戸惑いつつ、笑顔で答えた。


「うん!ちょっとね!」


それから音羽は、友達と他愛のないおしゃべりを楽しんだ。
一番話題に出たのが、アニメのプリキュアについてだった。



「…うるさいな。カッターで殺すよ」

「やめなさい!!」

「…チッ」


問題児の教室と音羽の教室はすぐ隣。
音羽には、その声が聞こえてしまった。




47: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/06(土) 22:00:21 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


嫌だなあ、と音羽は思いつつ、必死で笑顔を作った。
友達には、あの問題児の声は聞こえていないようだった。
聞こえていても、あの問題児のことなど何とも思っていないので、気にしていないのだろう。


「あ、あはは」


笑顔が引きつりそうになりながらも、音羽は何とかごまかそうとした。
だが、そのごまかしは通用しなかった。


「…音羽ちゃん、今日元気ないね」

「え…!あ…」

「なにかあったの?」

「えっ…、元気だよ!」

「ほんとうー?」


ごまかしても、全てがごまかせるものではない。
音羽の心臓の鼓動はいつの間にか早くなっていた。
それでも、音羽は会話を続けた。




「お邪魔ー」


「!!」


突然の出来事に、音羽は息を飲み込んだ。
なんと、あの問題児が音羽達の教室に入ってきたのだ。
問題児は、恨めしそうに音羽達を見てきた。


「―いいよね、あんたらは恵まれてて。私なんか、虐待されて、挙句の果てに母親に捨てられたのよ。
 父親はどっか遠くにいるし、顔なんて見たこともない。
 なんでか知らないけど、私、昔母親を殴ったって疑われてんの。馬鹿な大人共にね。
 それに比べてあんたらは…。
 母親においしいご飯作ってもらったり…愛されてる。私なんか愛されたことなんてない。
 あんたらはずるい。ずるい。ずるい…!」


問題児はペラペラと音羽にはわからないことを話しだした。
何のことを言っているのか音羽にはわからなかった。


「馨さん!勝手に他の教室入っちゃ駄目でしょ!?」


問題児の世話をしていた、さっきの女教師も入ってきた。
問題児の名前は馨といった。昔、母親を怪我させたという噂も耳にしていた。
こんな人、この学校にいていいのかな。
音羽はそう思った。



48: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/07(日) 07:42:06 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「…はぁ。またアンタ?行動くらい好きにさせてよ」


馨は呆れたかのように溜息をつきながら言った。
音羽達は、馨と女教師のやり取りを黙って見ていた。


「駄目よ。ほっといたら何するかわからないから」

「別に何もしてないじゃん。頭おかしい」

「―頭がおかしいのは貴方よ!!」


カッとしたのか、女教師は馨を怒鳴り散らした。
しかし、馨は全然怖がっていなかった。
「面倒くさい」とでも思っていたのか、呆れ顔だった。


「いちいち五月蠅いのよ。私何も悪いことしてな…」


馨がそう言いかけたとき、女教師は馨をビンタした。
教室がざわめいた。


「うわあ、あれ、何ていうんだっけ」

「何がー?」

「先生が生徒をたたくやつ」

「えーと…」

「体罰じゃない?」

「それだ!」


いろんな会話が音羽の耳に入ってくる。
が、音羽は馨たちに目を向けたままだった。



49: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/07(日) 07:54:50 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「何すんだよ!!」

「自覚しなさいよ!!あなた、動物を殺したのよ!?しかのこの学校の鶏を―!
 せっかく卒業生たちがお世話してくれて成長したのに…!
 それをムシャクシャしたから殺した?ふざけてるの!?
 ―正直、貴方のこと構うのもうんざり。飽きたわ。…先生なんて、やらなきゃよかった。
 …私がしたかったのは、こんなことじゃないのに」


女教師はその場に他の先生がいないからか、説教しつつ本音を漏らした。




「ちょっと、何の騒ぎ?」


音羽達の担任が入ってきた。
「あっ…」とさっきの女教師が声をあげる。
自分の声が聞こえてしまったのではないだろうか、と心配になったのだろう。


「…高槻先生?どうして此処に」

「…馨さんがここの教室に入ってきたので…。注意してました…。
 騒いでしまって、すみませんでした。じゃあ」


女教師は馨を引っ張って、隣の教室に戻ろうとした。
だが。


「待ってください高槻先生!
 …さっきのこと、聞きましたよ?」

「あっ…!」


さっきのこととは、恐らく女教師の本音のことだろう。


「生徒達の前でああいう言動は禁止です。
 以後気を付けるように」

「はい」


女教師は気のいい返事をすると、そそくさと戻っていった。



50: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/07(日) 08:06:44 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


訂正






「何すんだよ!!」

「自覚しなさいよ!!あなた、動物を殺したのよ!?しかもこの学校の鶏まで―!
 せっかく卒業生たちがお世話してくれたおかげであそこまで生きたのに…!
 それをムシャクシャしたから殺した?ふざけてるの!?
 ―正直、貴方のこと構うのもうんざり。飽きたわ。…先生なんて、やらなきゃよかった。
 …私がしたかったのは、こんなことじゃないのに」


女教師はその場に他の先生がいないからか、説教しつつ本音を漏らした。




「ちょっと、何の騒ぎ?」


音羽達の担任が入ってきた。
「あっ…」とさっきの女教師が声をあげる。
自分の声が聞こえてしまったのではないだろうか、と心配になったのだろう。


「…高槻先生?どうして此処に」


担任が問いただす。


「…馨さんがここの教室に入ってきたので…。注意してました…。
 騒いでしまって、すみませんでした。じゃあ」


女教師はそう言うと、馨を引っ張って、隣の教室に戻ろうとした。
だが。


「待ってください高槻先生!
 …さっきのこと、聞きましたよ?」

「―!」


さっきのこととは、恐らく女教師の本音のことだろう。


「生徒達の前でああいう言動は禁止です。
 以後気を付けるように」

「…はい。すみませんでした」


女教師はそう言うと、そそくさと戻っていった。



51: Y (WnihxfTkXQ)☆2016/08/09(火) 09:32:12 HOST:softbank221057075136.bbtec.net


「…まったく。
 …えー、では、朝の会を始めましょう。日直さん、前へ」

「は、はい!」


日直と呼ばれた子はスラスラと言われたことをやっていった。
音羽はさっきの問題児のことを考えていて、先生の話の時までぼーっとしていた。
どっと笑い声が溢れても、音羽は気付かなかった。
朝の会が終わると友達が心配してきた。


「音羽ちゃん、元気ないよ?大丈夫?」

「…え、なんでもないよ?」

「そっか」


友達は音羽を置いて、トイレに行ってしまった。
―何でみんな、あの人(問題児)のこと、気にしてないんだろう。
―何で、私だけこんな気持ちになるんだろう。
音羽は、あの問題児と自分に何か関係があるんじゃないかと思ってきていた。
でも、全然接点なんかない。話したことなんかもちろんない。
―どうしてなの。
1時間目が始まる直前、友達に言われた。


「なんかさ、音羽ちゃんとさっき教室に入ってきた人、似てるよね」

「え」

「なんだろーなー。まゆげと目のへんが似てる」

「…」


音羽は黙ってしまった。
もしかしたら、あの子とは親戚なのかもしれない。
だから変な風に思ったんだ。
音羽は納得した。




52: ゆーな☆2016/11/26(土) 17:01:42 HOST:218.231.192.152.eo.eaccess.ne.jp
面白いです!!更新頑張ってください(*^^*)

53: ポンコツ☆2016/11/26(土) 18:45:50 HOST:kd182251251002.au-net.ne.jp
ゆーな、うるさいんだけど!

54: ゆーな☆2016/12/02(金) 19:39:04 HOST:218.231.192.152.eo.eaccess.ne.jp
作者様のお力になればと思いましたが…
気に障ってしまったのなら、申し訳ございません。
今後、この掲示板でコメントを控えます。


55: アイ☆2017/12/02(土) 11:22:32 HOST:218.33.253.233.eo.eaccess.ne.jp
>>53
書き方少し酷くないですか


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