ピコ森 メル友掲示板


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交わした約束の有効期限

1: フレット☆2017/05/15(月) 11:41:56 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
久しぶりに書いてみたくなったので、書いてみようかなと思います。

―交わした約束の有効期限―


誰が好きとか、誰と誰が付き合っているとか、誰は誰が好きだとか。
そんな話題が僕の周りに出始めていた。
時に、「石門君は?」
なんて聞いてくることもある。
僕は、正直どうでもいいと思うのだ、そういうことは。

「いない」

そう答えれば、相手は必ず、「ふぅん」
と僕に興味を失う。
恋とか、小さいころはあこがれてたかもしれない。
ただ、今はどうだっていいのだ。

「お前、悲しいやつだな〜 青春楽しめよ?」

なんて言われたこともある。
僕は、青春とかどうでもいいし。
ていうか。
お前だって彼女とかいないだろうがっての。

「青春だぞ?」
「青春ってなんだよ」
「・・・・」

そんな会話も常習犯。
僕は、まったく興味がないのである。
この世界の恋というものに。



「沢口くーん!」
「キャーッ!今、手振ってくれたよね?!」

帰り際、廊下でたびたび女子の歓声を耳にする。
何が楽しいのだろうか。
あの大勢の女子たちは、あいつに恋をしているのだろうか。
可愛そうに。
あいつが選ぶのは、一人だけなのに。
そもそも、あの中から選ぶとは限らないのに。

沢口 抄黄 さわぐちしょうき

僕も、知っている。
いや、こんな僕でさえも知っている。
そう言ったほうがいいか。
ルックスは、いいのではないかと思う。
あいつみたいだったら、青春楽しめとか言われないのだろうか。
言われないよな。
むしろ、分けろとか言われてそうだ。
青春を分けろって、なんだそれ。
自分で考えておきながら、バカらしくて笑ってしまう。

ただ、思うことがある。

「あんな風だったら、もう少し。生きることも楽しかったのだろうか」

女子の歓声も聞こえない静かな廊下で呟いた。


2: フレット☆2017/06/02(金) 21:27:21 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
僕はもう、生きていくことに希望すら感じていなかった。
一度だけでもあんな風になってみたい。
誰でも、一度は持ったことがあるだろう。

あの人みたいになりたいと思う夢とか志とか。
僕は昔から、こんな自分が嫌いだった。
自分自身を見つけられずに、誰かのマネをしては満足して、それを自分だと。
本当の心から背を向けて生きている自分が大嫌いだった。

ただ、願って夢がかなうなら、誰だって苦労しない。
今僕たちが学んでいる勉強の教科書に出てくる昔の偉い人たちだって、何か努力して成果を出したから。
だから今僕の目の前にいる。
そんな現実的なことにまた心が縛られて、ますます自分が嫌いになる。

苦労したほうがいいよ。
その方が、後々楽だから。
そんなもの、僕が一番分かっているよ。
あいつが、教えてくれたんだから。

だけど僕は、自分を見失うのは、何年か前に辞めた。
たとえそんな気持ちを持ったとしても、すぐにどこか遠くへ追いやって、かくして、消滅させると決めたんだ。
約束を、交わしたから。

「コウ君は、絶対に。自分を見失わないで。どんなに辛くても、それが自分だと認めて。お願い」

ボロボロの体だった。
それでも、僕に教えてくれた。
最後まで。
美しい笑顔と優しい声で。
今でも、頭の中に鮮明に残っている。
忘れない。忘れてはいけない約束。


「うるせぇ」

僕が家を出ようとしていた時だった。
近くの家から、男の人の声が聞こえてきた。
彼女とのケンカだろうか。
こんな朝早くからか。
ご愁傷さま。
こうなったら女は強いからなぁ。

「待って!お母さんは、貴方のためを思って」
「あのさぁ」

どうやら、争っているのは母親らしかった。
前言撤回。

「あーもういいよ。また帰って来るから」
「ありがとう」

よくわからないけど、丸まったみたいだ。
親子喧嘩、か。

僕はたまに思うんだ。
大人って、二十歳からの人なんだろうなって。
じゃあ僕たちも子供なのだろうか。
だったらバスとかだって子供料金でいいと思うのだが。
中学生はまだ子供料金で良いだろ?
僕たち高校生も、子供料金で良いだろ。

「行ってきます」
「遅れないように行きなさい!」
「わーってる」

遅れるわけないじゃん。
僕だって高二だ。
大人は、僕たちを下に見すぎだ。
理由が、何であれ。
僕たちにとっては、厄介で煩いものでしかないのに。


3: フレット☆2017/06/04(日) 20:39:27 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
「初心忘るべからず」

この名言を、大人たちに言ってやりたい。
初めてお酒を飲んだときとか、タバコを吸ったときとかのあの気持ちを忘れないでほしい。
僕たちは、そうなろうとしているのだから。




4: フレット☆2017/06/13(火) 23:59:58 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
僕は、あの親子喧嘩を見なかったことにして、急いで駅に向かった。

「時間間に合うかな」

いつも余裕を持って家を出ているはずだけど、たまに不安になるのだ。
母にあんなに言っておきながら。

「よかった」

どうやら、間に合ったようだった。
少し余裕を持っていた方がいいからな。
いつものように通学、通勤ラッシュの中の電車に乗り込んだ。
僕も、通学ラッシュの中の一人なのだが。

「いよっす。石門君」
「おはよう。小柳さん」

通学、通勤ラッシュの中だと言うのに、よくこんなに平気で人に話しかけられるものだ。
僕は少し小柳さんはすごいと認識した。
小柳さんは、クラスの中でも目立つ人だった。
性格がいいせいだろうか。
いつも回りには人が沢山集まって楽しそうにしている。
その姿を見ていると、アイツとシルエットが重なって見える時がある。

「どうした?」
「え、いや、何でも?」
「そっか」

学校につくまであと、もう少し。


5: フレット☆2017/06/20(火) 14:44:31 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
「そう言えば、石門君さぁ」
「な、何?」
「決まった?」
「ん?」

何の事か少しも分からなかった。
何か決めるようなことでもあったであろうか?

「あぁ、ゴメン。言葉が足りなかった。役だよ。文化祭の」
「あぁ。成る程。うーん、よくは考えてないかな」
「つまりなんでもいいってことか?」
「ん、まぁ」

僕が答えると、小柳さんは頷いた。
そしてそのまま黙ってしまった。
・・・気まずい。
とにかく気まずい。
その時、アナウンスが鳴った。

『まもなく、紅囹学園高校前です』

静かなアナウンスがなり終えたあと、小柳さんが 僕の方を向いた。

「そろそろだな」
「うん」

僕たちはドアが開く前に身構えた。
今は通勤、通学ラッシュ。
ドアまで行くのにも一苦労なのだ。
電車から降りても同じ紅囹学園高校に行く生徒で沢山になるのだ。

「憂鬱だ」
「あぁ、憂鬱だ」

二人してドアの前を睨んだ。
電車が音をたてて止まった。
ドアがゆっくりと開いて、ドアの前にほんの少し、道が出来る。

「行くか」

僕が声をかけると小柳さんはうなずいて前をじっと見ていた。
僕は息を吸って、「失礼します」と出来るだけ高校の風紀を乱さないような声で言った。
ここから、もう紅囹学園高校なのだ。
新入生として始めて行ったとき、くどすぎる程言われ続けてきた。
今の一年も言われているんだろうな。

「あ、おはよう。佐那」
「いよっす。荼依」

小柳さんは僕に会釈をしてから、友達の方へ歩いていった。

「・・・あれ?」


6: フレット☆2017/06/20(火) 23:31:10 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
僕は一人改札口を出ながら、ふと視界の中に写ったある人を頭の中に思い浮かべた。
見た事がある。
というか、アイツじゃないか?
きっと、そうだ。
幻覚なんかじゃない。

「凉架・・・」

笑顔の君を、どうして守れなかったのだろう。


7: フレット☆2017/07/24(月) 19:18:26 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
そんなわけ、ない。
涼架が、ここにいるわけないんだ。
そんなの、僕が一番分かっているはずなのに。
だって、涼架は。
1年前の冬。
涼架は―


「あ・・・。あぁ。嘘。リョウちゃん?な、なん、で」
「・・・おい」
「あ、おじさんっ!リョウちゃんが、リョウちゃんが!」
「・・・知っている。みれば、わかる」
「おじさんっ!リョウちゃんは、どうして、こんな事?」
「知らん」
「なんで?お父さん、なんでしょ?なんで、知らないの?!」
「うるさい!」
「・・・っ」


あの時、どうして何もできなかったんだろう。
高校1年生。
これからいろいろまた始まって、また少し。
大きくなっていく高校。

「高校に行ったら、呼び方も変える?」
「え、何で?」
「いや、だって高校なのに、その」
「いーじゃん。私は、そっちがいい」
「じゃあ、高2になったら、変えよう」
「微妙な時に変えるね。まぁ、いいや。うん、それでいいよ」

そして今、高校2年。
涼架。
僕はいま心の中でも、口に出すときも。
約束通り、涼架、そう呼んでいる。
涼架は、僕のことを 幸汰。
そう呼んでくれているだろうか。


「石門」
「はい。え、沢口さん?」
「同級生なのにさんとか、いいよ別に」
「あ、はい」
「なに緊張してんだよ。石門」
「だって、お前といえば、2年のモテ男ですし」
「何言ってんだよ。そんなの気にすんなっての」
「うん」

なんで沢口が僕なんかに話しかけるの?!
意味不明ですけど?!

「すげー顔」
「え、そう。かな」
「おう」

どんな顔だよ。
ほら、女子の目が痛い。
暑いなぁ。

冬が来ればまた、涼架に会えるだろうか。
目に見えない涼架に。


8: フレット☆2017/07/25(火) 13:18:28 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
「石門はさ、好きなやつとかいるの」
「いない、けど」
「まじかよ」
「沢口は、いるのかよ?」
「まぁね」
「まじで?!あの中のだれか?」

沢口の顔は無表情だった。
何か思い詰めているような、そんな顔だった。
今沢口が何を思っているのか、僕にはわからなかったけど、早く質問に答えてほしかった。

「なぁ?」
「違うよ。あの中の人じゃない」
「ふーん」
「聞かないの?」
「は」

何を。
これ以上聞くことなんて特にないんですけど。
沢口の恋愛事情なんて別に知りたくない。

「石門も知ってるやつだよ」
「え、そうなの」

僕にもわかる人。
2年で一番美人な人?
だろうな。
こいつのルックスだったらそうだろうな。
なんて勝手に自己解釈したものの、二人の性格が合わな過ぎて自分でもどうかと疑った。

「誰だと思う」
「・・・珀波さん?」
「違うよ」
「えー」

いや、分かってましたよ。
何となく雰囲気が違いますし。
ただ、このほかに思いつくの何て。

「高橋」
「はぁ?!」
「高橋のこと、知ってるんだろ」

沢口の目が、今まで僕が見た中で一番冷たい目になった。
僕は、どういえばいいんだろう。
知っていると、正直に言えばいいんだろうか。
知らないと、嘘をつけばいいのか。

「高橋。それが、俺が好きなやつの名前だよ」
「高橋・・・。涼架」
「そう、高橋涼架。君の幼馴染だっけ」
「あ、あぁ」

「俺は、高橋が好きだよ」


沢口抄黄、お前は、涼架が好きなのか。
じゃあ、僕の気持ちは、なんといえばいいんだろうか。


9: フレット☆2017/07/28(金) 12:55:02 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
「驚いた?」
「まぁ」
「俺の父はね、君のお母さんと兄弟なんだ」
「・・・はぁ」
「つまり、俺たちは従兄弟なんだよ」

成る程。
理解はできるただ、僕のお母さんに兄弟なんかいたかな。
そんな話はじめて聞いた。
多分。

「じゃあ、何で凉架の事知ってるんだ?」

僕と凉架は同じクラスだった。
ただ、コイツはいなかった。筈だ。


10: フレット☆2017/07/28(金) 18:01:42 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
「俺は君の従兄弟だよ?」

だから何だよ。

「君のすべてを知ってるよ」
「何で?!」
「何ででしょ。そうだね、凉架が好きだから、かな」
「凉架の事なら分かる、けど。何で僕の事まで?」
「俺は、凉架に関わる全ての人の事を知ってる」

ん、な。
そんなことって。
だって、凉架に関わる人全てなんて。
ということは、この学校の事も全て知っていると言うことか?

「どうした?何、疑ってるの。俺だって人間だよ。出来ることには範囲がある」
「あ、だよな。良かった」
「マジでそんな事思ってたわけ」
「ゴメン」
「や、いいけど」

この会話を最後に僕たちは別れた。
いつもの如く女子が沢口の方へやって来てそのまま沢口に何か言っていたから、僕は邪魔しないようにそっと下駄箱に向かった。

「あーもう。やだ。なんでこんな階段多いん?ここ」
「さぁ。それが都会やって」
「えー。いややわぁ。都会は」

どこの人だろう。
関東?
いや、もっと違うところかな。

「でもさ、九州に比べたら、此方は涼しいよね」
「あーね。まぁそれが唯一の救いやね

「本当に」

『ホンマに』
そう言ってないと言うことは、関東ではない。
てか、九州って言ってたな。
てかおかしいから。
ここ都会じゃないから。
彼女たちからしたら、ここでも十分都会になるのだろうか。
なるんだろうな。
ここがどこかは、個人情報なので伏せておく。
将来のために。

「ちょっと、先にいかなくてもいいじゃん」
「追いかけるか、普通」

沢口が二段飛ばしで階段を上がってきた。
息が乱れているので所々三段飛ばし、かも。
どちらにせよ。
僕を追いかけてきていた。
何で?

「まだ話したいことが、あるのですが」
「な、なにを」
「凉架が幼稚園に入る前の事とか」
「うわ、引くわ」
「何で?!」
「流石に知りたがるにも程あるだろ」
「そうかな」
「一般的には」
「それどーゆうこと」

昨日まで遠い存在だったコイツが俺の隣にいる。
人間って怖いなぁ。
改めて、そう感じた。
コイツも、何か怖い。
普通の人じゃないような。

それに、凉架が好きっていったって。
今更全てを知ったって。
意味が無いんだ。
凉架は、
     この世界には

居ないんだから。


11: フレット☆2017/07/29(土) 13:16:13 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
今更凉架のことを知ったって意味ない。
そう言おうとしたのに、言えなかった。今言ってしまったら、コイツの全てが無くなってしまうんじゃないか。
そう僕の心の中の何処かが、一瞬でもそう思ってしまったから。
僕の従兄弟で、凉架を好きで、全てを知ってる(?)。
本当なのか。
何一つ、僕は沢口の言を知らない。
でも、沢口は僕の言を知ってる。全て。
それって、

「不公平じゃん」
「え、何?」
「あ、いや。声に出てた?」
「だから反応してるんでしょ」
「そうか」
「で、何が不公平?」


12: フレット☆2017/07/31(月) 13:05:03 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
「沢口は、僕の事全て知ってるんだろ」
「うん」
「でも僕は何も知らない。それって、不公平じゃないか」
「そう、だね」
「だから、これからは、僕の質問にできる限り答えてもらう」
「いいよ」
「即答」
「でも、君が僕の情報を必要とするときが来るのかな」
「来るよ。必ず。もう少ししたらね」
「石門にしては随分はっきりと」
「まぁね。じゃあ」

僕はそれっきりにして、自分の教室に入った。
沢口も、隣のクラスに入っていった。


13: フレット☆2017/08/20(日) 15:15:28 HOST:fl1-119-244-128-246.ngs.mesh.ad.jp
「えー!何々?!石門君って沢口君と仲良かったの?」
「え、ホントに?」

僕が教室に入った途端女子からの質問攻め。
なんで、僕がこんな目にあわなきゃいけないんだよ。
これも全部、あいつがモテすぎるせいだ。
僕は何にも悪くない。
ただ、今になって出てきた、僕の身内であり、涼架の関係者。
嫌でも警戒していなければならない存在だった。

「別に、そこまで仲いいわけじゃないよ」
「そうなの?」
「でも喋ってたでしょ、さっき」
「まぁね」

しつこい。
僕はただ、それだけを思った。
女子って、しつこいな。
面倒くさい。
初めて、僕はそんなことを思った。
それは、僕が周りの人に何の興味も持っていないということだった。
今までは。
涼架と沢口の一件のせいで、気が抜けなくなってしまった。
いつ、沢口のように出てくるかわからない。
僕は、どうしたらいいんだろう。


「沢口、ちょっと」
「なに?君から話しかけてくるなんて、珍しいね」
「それはどうでもいいんだ。手伝ってほしいことがあるんだ」
「・・・・・。君が何絵お考えてるかはわからないけど、いいよ」



「なに、何で君の家なの」
「いいから」

僕は、沢口にどこに行くとも伝えずに、僕のうちまで引っ張ってきた。
それは、沢口がいないとできない、僕から母への試し技、だったから。
沢口が疑う気持ちもようわかる。
だけど、これは

「お前じゃないとできない仕事なんだ」




14: 影山☆2017/08/22(火) 16:38:34 HOST:sp49-97-92-127.msc.spmode.ne.jp
中学三年になった私は、
大好きな先輩と会えなくなった
心が痛くてたまんない
先輩の卒業式泣いちゃったな。
先輩の卒業式...
先輩に告白しないともう
会えない、、
でも涙が止まんないどうしよう
先輩が私の方に来て、
「大丈夫ですか?!」
大丈夫なわけないじゃん
「大丈夫です!」
「そっか良かった
泣かないでくださいよ」
「だって先輩が
卒業しちゃうんですもん」
アナウンス「中学三年の人体育館前に来てく
ださい」
「もう行かないとΗ


15: フレット☆2017/09/22(金) 20:48:58 HOST:fl1-119-244-128-246.ngs.mesh.ad.jp
荒らしのお方ですか?
でしたら、お帰り下さい。
ですが、貴方の恋の続き、個人的には気になります。
年の差恋愛好きなんです。
設定的に。
それでは

「ただいま」

僕はただ一言、それだけ言って玄関を開けた。
目で入れ、という合図をした。
それを察したのか、沢口が無言でうなずいた。

「あら、早かったのね。あ、」

一言だけそう言って、無言で目を見開いた。
つまり、母さんは、こいつを知ってるということ。
だと思った。

「お友達?」
「っ、はい」

その会話で、僕の中にあった疑問が確信に変わった。
やはり、僕は間違っていなかったんだ。
母さんに、兄弟なんていなかったんだ。
沢口は、僕のいとこなんかじゃなかった。

「沢口、中で話そう」
「わかったよ。全部、話すよ」

やけに、部屋が暗く見えた。


16: フレット☆2017/11/03(金) 20:14:50 HOST:fl1-119-244-128-246.ngs.mesh.ad.jp
白いソファに僕が座り、その向かい側のもう一つのソファに沢口が座る。
母は近くのドアに寄りかかっている。
暗いと思っていた部屋は、カーテンのせいだったことがわかり僕は会話に入る前にカーテンを思いきり開けた。
日の光が入り少しだけ色彩を取り戻した我が家は今から少し深刻な話をする場所としては、あまり合わなかった。
それでも、暗い部屋よりは明るい部屋のほうが整っている沢口の顔が生える。
そのせいか自分までもが役者になった気分になってしまう。

「話してほしいんだけど」

僕の言葉に沢口は何を言うまでもなくうなずくだけだった。
そして少し重そうに口を開いた。
ギシッ― とどこかの天上が軋む音がした。

「俺さ、お前のいとこだって話しただろ。でもさ、」

『嘘なんだよ』

の言葉を期待していた僕の心に、沢口の言葉は、大きなダメージを負わせることになった。

「でもさ、俺本当はお前の兄弟なんだ」
「は、はぁ?」
「な、なんですって?!」

僕よりも大きなリアクションをしたのは母だった。
それまで黙っていた母がいきなり大声を上げたから、僕の肩がはねた。
沢口なんか目を見開いている。
そんな僕たちをよそに、母はこちらに詰め寄ると沢口の前に立った。

「あぁ・・・」
「な、なんだよ、変な声出して。怖いって」

カーテンを開けておいてよかったと思った。
これで開けていなかったら、ただのホラー映画のワンシーンになってしまうところだった。
大きく開け放たれたドアは、母の重みが無くなったのを悲しむように冷たい風を入れてくる。
二階の窓が開いているのかもしれない。

「似てると思ったのよ。そう。貴方が」
「え、あ、その」

うんうん。
と一人で納得している母を見て、僕らはどうしようもなくなてしまった。
シリアスな雰囲気になると思っていたのが、とんでもない方向に曲がってしまっている気がするのだ。

「幸汰。子の子はね、本当にあんたの兄弟なのよ。行き別れてしまった兄弟」
「いや、同級生なのに?」
「そうよ」
「双子じゃなくて?」
「そうよ」

母は沢口を見つめたままうなずいて、そのまま沢口の隣に座り、僕にすべてを話してくれた。
本当だったら、沢口に聞こうと思っていいた僕が、僕だけが知らない話を。

「あんたが生まれてすぐ、私は離婚したのを、知ってるわよね。当然だけど。その後、私がもう一人授かっちゃってね。けれどその子はあんたたちのお父さんが連れて行っちゃったのよ」




17: フレット☆2017/12/25(月) 17:17:52 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
「て、ことは。俺たちは兄弟ってこと。判った?」
「判った。でも今になってどうしてこっちへ来たんだ。それに、離婚したといっても、僕たちが実の兄弟だったのなら一年に一回でもいいから会わせてくれたらよかったのに」

僕が不満を一気にこぼすと、母はため息をついた。
少し言いすぎたかもしれない。
でも、今の僕が心から思った事だった。
もっと早く僕と沢口のことを打ち明けてもらっていたら、もっと早くに対処できたかもしれないのに。
涼架に、本物のこいつを見せてあげられたのに。
同じ血液が流れているのに、容姿も苗字も違う。

「涼架にも、お前を見せたかったな」

呟きが、天井に吸い込まれていった。


18: フラット☆2017/12/26(火) 13:38:05 HOST:p76edae13.hkidnt01.ap.so-net.ne.jp
私、バカ、アホ、デブだよ‼ 誰でも私をいじめていいよ♥♥♪♪


19: フレット(sage)☆2017/12/27(水) 18:10:44 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
僕の呟きが完全に天井へ吸い込まれるはずもなく、その言葉は沢口の耳にも、母の耳にもしっかりと聞き取れていた。

「これが、僕の兄弟だって。お前を紹介してやりたかったよ」
「・・・何で?涼架がいないことを、まだ俺に・・」

そこで沢口の言葉は止まった。
本人は止める気なんてなかっただろう。
きっと、味合わせる気か、やら何か言っていただろう。
しかしそうできなかったのは、形の言い沢口の頬に流れる止まる気配のない涙が伝っていたからだった。
その涙は、まるで沢口に言葉のつずきを言わせないようにするように流れ続けていた。

「大丈夫?」

母が小さい子供に訪ねるようにやさしく沢口に声をかけた。
沢口は小さくうなずくと、また僕のほうを見た。

「お前に、嘘をついていたのは悪かったと思う」
「別に、いい。僕もさっきは・・。お前の心情も考えずに、ごめん」

沢口は僕の謝罪を受け取ると、急に真剣な顔になった。
今までの泣き顔や少し感情的になった顔はずべて演技だったのかと疑いたくなるくらい。
沢口はおもむろに体を前に倒すと、その先の言葉を発するのを一瞬ためらった。
しかし僕がうなずくのを見てからか、重そうに口を開いた。

「お前、涼架のあの事件がどう処理されたか、知ってるか」

いきなりの問いに驚きつつ、しっかりと首を振った。
涼架の事件。
つまり、涼架の命がなくなったあの事件のことだろう。



20: Romanesque(sage)☆2017/12/27(水) 20:12:32 HOST:pc10208.chukai.ne.jp
控えめに言いますね。
神ですか!?
文才を分けて欲しいものです(笑)
更新がんばって!!!


21: フレット(sage)☆2017/12/28(木) 16:48:56 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
ありがとうございます!
本当に!
お互い頑張りましょうね!


22: エム猫ちゃん ディア& (DQR3XSYjuU)☆2018/01/05(金) 15:40:37 HOST:pc10208.chukai.ne.jp
はじめまして!
更新頑張って下さい!
Romanesqueさんも言ってる通り、文才スッゴ───(ノ)´∀`(ヾ)───ィデスね!
( ´-` ).。oO ( ♡応援してるゾ♡ )



23: フレット(sage)☆2018/01/13(土) 21:26:56 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
ありがとうございます!
励みになります!

窓ガラスを突き抜けるようにして部屋中に響くサイレンの音。
平和だった家の中に少なからず緊張が走る。
カーテン越しに見える赤いライト。
回転の最中に見える影と赤のコントラストが一層緊張感を呼び込む。
カーテン越しに見えるライトは、つまり近くで事件が起こったことを物語っている。

「何かあったのかしら・・?」
「判らないけど」

母が心配そうにカーテンを少しだけ開ける。
その様子を少し見てからもう一度テレビに目線を移した。

「あ、あら?」
「何?」

母の驚きと不安が入り混じったような声に一抹の不安を覚えた。
頭のどこかが、何か良くないことが怒ることを予感させる。
急に心臓が高鳴りだした。
まるでテストを返される前のような感覚。


そこまで思い出して、僕はようやく現実に戻った。
あの時の鮮明な記憶を思い出して、少しだけ頭痛がした。
今でも思い出すと頭がいたくなるし心が苦しくなる。
自分の無力さを知ったあの日。
涼架を好きだと、好きだと知ったあの日。

「あ、そうか」

好きだと、知ったんだ。
僕はあの日、涼架を好きだと。
知ったんだ。

「どうした?」

沢口の心配そうな声も、母の顔も。
僕には見えなかった。
沢口に抱いていたあの微妙な感情も、沢口の思いを聞くたびに自分の中で湧き上がる、反抗じみた感情も。
今ならわかる。
全部涼架が好きだったから。
自分の罪悪感と沢口への苛立ちも全部。

「何でもない。今日は、もう終わりにしよう」

今更気が付くなんて、僕は・・・。
世界で一番の不幸せものだ。
違う、一番の馬鹿者だ。



24: フレット(sage)☆2018/01/21(日) 20:08:34 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
沢口は帰り際、またね。
と呟いた。

「大丈夫?」

母の心配そうな声は、今の僕には響かなかった。
大丈夫、と頼りなく掠れた声で言いながら、精一杯の笑顔を見せた。
その笑顔は、母の顔には笑顔に見えただろうか。
まだ何か言いたそうな母を残して二階に上がった。
自分の部屋に入ったと同時に苦しくなった。
フローリングの床に透明な滴が2つ山を作った。


25: フレット(sage)☆2018/01/22(月) 23:53:57 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
『泣かないでよ、全くもう』
今すぐ叱って欲しかった。
凉架の、笑った顔が見たかった。
今になってやりたいことが浮かんでくる。
何十回も見てきた凉架の顔が急に愛しくなった。
手を伸ばしても絶対に届かない場所にいる。
カーテンが沈みかける夕日で赤く染まっていた。
それはまるで、あの日の川原のようだった。

「あ、あぁ」

小さく掠れた声しか出せずに、手を伸ばした。
その手が誰かの手をつかむわけ出でもなく、いく宛のなくなった手は空気をつかむ。
いつもとは違う、生々しい空気を。
赤く染まった川原。
赤に反射して時折光の入る川。
いつもの夕方の景色は、地獄のように怖かった。
凉架の血の気を失った手が何かを求めていた。
一年前の僕には何か判らなかった。



26: Romanesque☆2018/01/23(火) 18:12:44 HOST:pc10208.chukai.ne.jp
めっちゃ更新されてる.。゚+.(*''*)゚+.゚

27: フレット(sage)☆2018/01/23(火) 23:52:24 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
頑張って更新してます!
お互い頑張りましょうね!

凉架が何を求めているのか。
この世界から旅たつ前に凉架が最後に願った何か。
凉架の居ないこの世界で僕はどうしてその答えを知ることが出来ようか?
最後に凉架と交わした約束。

「絶対に、自分を見失わないで。自分で自分を見失ったら、どうしようもないよ」

『だから、お願い。ずっとそのままでいてね』

別に凉架が口にしたわけではなかった。
ただ必然的に、そう感じた。
この約束がいつ破られるかは判らない。
もしかしたら、一生破らないかもしれない。
僕が破らないことを、凉架は望むのだろう。
凉架がそれを望むのなら、僕は一生守っていこうと思う。
僕はあの日の凉架の手を今ようやく掴めたような気がした。

ポコン。
机の上から聞こえた音は今まで聞いた中で一番現実味のある音だった。
きっと昔に遡りすぎて感覚がおかしくなっていたのだろう。
今母にあったら懐かしくなるかもしれない。
机の上からの音は、スマホにメールが届いたのを知らせる音だった。
沢口からのメールだった。
珍しいな。
何て思いながらロックを解除してメールを読んだ。
ただ一言書いてあった。

『復讐しよう。凉架を殺した犯人に』

しばらく、動けなかった。


28: フレット(sage)☆2018/01/25(木) 00:31:47 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
復讐。
口で言うのも、言葉を書くのも簡単に行える。
でも、この場合の復讐は、相手に少なからず危害を加えるということだろう。
凉架を殺したやつはいまだ捕まっていない。
僕だって、捕まってほしいと思う。
このままそいつが逃げ、凉架を殺した汚ない手で生きる。
許す、なんて一生できないと思う。
ただ僕には、凉架と約束したから。
自分を見失わない、って約束したから。
出来ない。
復讐なんて出来ない。
沢口は、どんな気持ちで僕に送ってきただろう?
断ることもできる。
出来ない、と自分がいっているのだし、それが一番だと思う。
その思いに反するように、僕の指は動いた。

『いいよ』

たった三文字。
それだけの言葉には、どんな言葉よりも、僕には重たかった。


29: フレット☆2018/02/04(日) 00:20:25 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
いいよ、なんてどうして簡単に打ってしまったのだろう?
今更考えを巡らせたところで何か現状が変わるわけでもない。
やっぱり止めよう。
そう打つことも可能ではあった。
しかし、無理だと思った。
だから現状は何も変わらない。
いいよ、と打ったのが自分の考え、本心であるとは到底思えなかった。
正確には思いたくなかった、といった方がいいのかもしれない。
凉架がこの世界にいない寂しさや、自分の無力さで凉架を無くしてしまった。
しかし、簡単に復讐を認めてしまった。
それは僕のどこかに、沢口と同じ気持ちがあるのかもしれない。


30: 青葉。.:*・゜☆2018/02/04(日) 15:49:31 HOST:pc10208.chukai.ne.jp
(神ω神)
やべぇ!!!
BL書いてる人ですよね?
ハイキューの.。゚+.(*''*)゚+.゚
どっちも頑張れっ♡


31: フレット☆2018/02/04(日) 16:33:55 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
青葉さん、有り難うございます。
そうです、ハイキューで書いてました。
すぐ荒らされましたけど・・・。
更新頑張ります!

もし、自分がもっと強かったのなら。
自分がもっと大きかったのなら。
何度そう考えただろうか。
凉架がこの世から消えて、信じられずに疑ったまま終わった葬式。
棺の中から凉架が笑顔で僕に笑うのではないか。
そうしたら僕はあえて驚かないでおこう。
そうしたら凉架、どうするかな。
子供のような思考で、それでもちゃんと涙を流しながら、凉架を見送った。
凉架の友達も沢山来ていた。
その中には勿論僕の知っている人もいた。
しかし誰一人として声をかけようとも思わなかった。
僕に声がかかることも無かった。
昔と言いがたい昔。
僕にとっては遠い昔。
昔から引き剥がされるように机の上のバイブが鳴った。

「明日、放課後駅で待ってて」

展開が進んでいく。
もう僕が何を言ったところで無意味だろう。
沢口に考えはもうすでに僕には止められない。
止められるとしたら、凉架だけだ。

沢口の夢にでも凉架が出てきて止めてくれることを願って眠りについた。


僕の願いは凉架に届かなかったらしく、予定通りに沢口が駅に待っていた。
階段をかけ上がった僕の息は耐え絶えだった。
沢口を一度凝視してから、耐え絶えだった息を飲んだ。

「ひぅっ!?」

声とも似つかぬ声を出して、沢口のすぐ右に目を向けた。
見たことのない制服を着ていた。
毛先が肩にほんの少し着いている金色にも見える茶色の髪。
白いベストに濃紺のスカート。


32: フレット☆2018/02/05(月) 23:56:18 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
白色のソックス、黒の靴。
髪色を除けばごく普通の学生だった。
しかし僕は、そんな彼女から目が離せなかった。
今目の前にいるのは、何時だったか僕が駅の改札口で見かけた、凉架にそっくりな彼女だったからだ。
最初は沢口の彼女かと思った。
こんな大切なときに彼女を連れてくるなんてどうかしてる、と思っていたのだ。
しかし、彼女の姿を改めてしっかり認識してしまえば、沢口と彼女がそんな関係ではないことは見てわかる。
それに、沢口は凉架が好きなはずだ。
それなのに彼女なんてつくったら、もし本当の彼女だったとしても、凉架の名前を出して怒っただろう。
それも際限はしっかり考えただろうが。
学校の風紀を乱す訳にも、大勢の前で怒りの声をあげる訳にも、いかなかったから。
凉架と、約束したから。
その約束に有効期限があった訳ではない。
しかし凉架がいなくなったその日から僕は必然的に、約束を守っていた。
凉架の中では、自分。もしくは二人の内どちらかが死ぬまで、が有効期限だったかもしれない。
しかし、今の僕が思う有効期限は、最後に残ったどちらかが死んでしまうまで。
といっても凉架は何の約束もしていないから、僕が消えたらそこで終わりだったのだろうが。

「えーっと」

何も言わなくなった僕を現実に戻してくれたのは彼女の一声だった。

「しっかりしろよ」
「悪い」

二人に謝りながら体を起こし背筋を伸ばす。

「私は、磨里です。高橋磨里。高橋凉架の、妹です」
「え」

最後は小さくなりながらも、最後まで話してくれた。
しかし僕は衝撃的過ぎて、もう一度凉架の妹。磨里・・さんを凝視した。
だから、似ていると思ったのか。
駅に響くあアナウンスの音が、新たな始まりを予感させた。


33: フレット☆2018/02/07(水) 21:54:14 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
アナウンスを聞きながら尋ねた。  

「磨里・・さんでいいのかな?」

どう呼んでいいのか判らずに確認をとった。
妹、ということは呼び捨てでもいいような気がしたが、もし彼女が不満を抱いてしまったら困る。
沢口が一度でも手本として呼んでくれたら良かったのだが、残念ながらそんな機会は無かった。

「あ、えっと。呼び捨てで、良いです」

やはりこんな質問には慣れていないのか、濃紺のスカートを小さい手で握りながら、歯切れ悪く答えてくれた。
僕は答えが反ってきただけで安心した。
一応確認をとっておいて良かった。
一応予想とは合っていたが、磨里がどんな人なのか知らない中でも下手に逆鱗に触れてしまってはいけない。
女は、割と面倒臭いと知っていた。
沢口のファンと、凉架のお陰で。

「じゃあ、呼び捨てでいくよ」
「はい」

磨里がスカートから手を離しながら微笑んだ。
その顔が凉架に似ていたものだから、思わず綺麗な頬に手を伸ばしかけた。
しかし、手が腰より少し前に出たところで踏みとどまった。

「じゃあ、あっちに行こう」

沢口の指が指した方向には、駅代表とも言えるカフェがあった。
確かに美味しいし、オシャレではあるが。

「並ばないと入れませんよ、人気あるので。予約とか無かったですよね、確か。来月からなら在るみたいですけど」

磨里がカフェから沢口に目線を戻しながら僕が思っていた事と全く同じことをいった。
磨里の言葉に、僕も便乗させてもらった。

「駅から出れば、人があまり来ない旨い店があっただろ?確かに、此処みたいにオシャレじゃないけど」

それに、きっと多くの人がいる場所ではすべきではない話だ。
聞かれては困るし、多くの不信感と不快感を与えることになるだろうし、制服を来ている今、風紀を乱す訳にはいかない。
少々面倒な事まで考えなければいけないが、悪い学校ではない。
それに、僕の予想は間違っていないはずだ。
僕と磨里の話に、沢口はしばらく考えてから、深く頷いた。
それを合図に、僕たちは駅を後にした。


34: フレット☆2018/02/08(木) 23:59:53 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
駅を出ると、冷たい風が肌に突き刺さる。
しばらく歩いただけで痛みそうな寒さだった。
磨里も寒そうにマフラーを口元まで埋めている。
どうしてか沢口だけは寒そうでなかった。
背後にはまだ人が多く暖房設備の整った駅がある。
あの空間に戻りたいが、出来ない。
すれちがう通行人もそれぞれに防寒対策をしている。
磨里はいつしか僕の隣にいた。
僕も一応マフラーをしているが、これだけでは暖かくはならない。
ポケットにカイロが入ってはいるが、手を突っ込みながら歩くことはできない。
もう少し我慢すれば暖かなカフェに入れる。
そう言い聞かせて、冷たくなった手を固く握った。
後ろに沢口の気配を感じながら目的地へと歩いていく。
先程のように賑やかな場所ではなく、裏通りにある店だ。
人もまばらになり、目的地が近づいてきた時、隣にいた磨里が口を開いた。

「私、石門さんのこと聞いてたんです。よく、姉が話してくれました」

それだけ言うと、再びマフラーに口元まで埋めてしまう。


35: フレット☆2018/02/10(土) 22:10:49 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
「凉架は僕の事、何て言ってた?」

僕が恐る恐る聞くと、磨里が目線をこちらに寄越した。
悪い答えが帰って来ない事を願いながら返答を待った。
再び濃い茶色のマフラーを下ろした。
直後、白い息がフワッ と放たれる。
主を無くした息は、遠い空の彼方へ消えていった。
それを見届けてから磨里が口を開いた。
第一声が発せられる直前に大きく心臓が脈を打った。
磨里がもう一度僕に向けた黒い瞳は、その中に闇を抱えているかのようだった。
引き込まれるー 直感的にそう感じ、目線を下へ落とした。
磨里は僕へ冷たい瞳を向けたままだった。

「覚えてないです。なんか、忘れちゃってるみたいです。姉の事は覚えてます、でも。姉が貴方の名前を出した後の言葉は・・・覚えてないです」

衝撃的で、言葉が出てこなかった。
僕のことだけ忘れる、というのが理解できなかった。


36: フレット(sage)☆2018/02/18(日) 13:13:21 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
じゃあ、君は・・・。
再び思考を巡らしかけた時、今度はマフラーの下からくぐもった声が聞こえた。

「だから、貴方のことは沢口さんに教えてもらいました。そしたら・・・。少しずつですが、記憶が戻ってきたみたいです。たぶん会話するには十分な情報はあるはずなので・・・」

そこまで言うと、再び黙ってしまった。

「そろそろか?」

沢口が後ろから問いを投げかけてきた。
磨里がいる右の方を見ると、先ほどとはうってかわり古い民家が立ち並ぶ住宅街に入っていた。
古いといってもそこそこ綺麗ではあるし、田舎ほどではないけど。
割と白い壁が多い住宅街の中に、磯とすら思える雰囲気を放つ通さ菜喫茶店があった。
しかし、駅の喫茶店が混んでいればっ子へ流れてくる客も少なくない。
しかも、近隣住民にも大切にされていた。
店長さんもいい人で悩みも聞いてくれるし・・・。
駅の喫茶店が混んでいたためにこの喫茶店に流れ込んだのは一年も前だ。
しかし、この喫茶店を始めてみた時祖母の家を思い出して少し感慨深いものがあったことは今でもはっきり覚えている。

「・・・こういうところ、私嫌いじゃないです。姉も・・・涼ちゃんも嫌いじゃないはずです」
「・・・え」

磨里が涼架を姉ではなく涼ちゃん、と呼んだことに声を出してしまうほど驚いた。
普段僕は驚いても心の内でそっとしまい込むタイプだ。
だいぶ珍しいのかもしれない。いや、ただ僕が人に心を開いていないだけだ。
僕が驚いたのちに自己嫌悪に浸っている間、磨里は頬を少し赤らめていた。

「や、あの。いつもそう呼んでいたので…。つい」
「俺はいいと思うよ。姉妹って感じがする」

沢口が磨里に笑顔を返しながら、僕に目で『素直に驚くなよ、少しは察してやれ』と、言っていた。
あくまで僕の推測であり、僕自身が僕に語り掛けていることでもあるのだが。

カラカラ―
戸を開ける音の後に上につるしてあるベルが鳴った。
その音に迎えられながら三人で戸をくぐった。
フローリングの茶色い床に靴の底をつけて音を鳴らしながら一番奥の席に座った。
人はまばらに座っており、何も考えずに話す、ということはとてもじゃないができそうに無かった。

「じゃあ、始めるね。俺はね。涼架は自殺したんじゃないと思うんだ。涼架は、殺されたんだ―


37: フレット(sage)☆2018/02/19(月) 22:40:22 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
殺された?
涼架が誰かに殺された。しかし、涼架が死んだ事件は河川敷の奥。
光の届かない暗闇で、ナイフを刺されて死んでいたはずだ。
幼い僕が見るには衝撃の一言では表せないくらいのものを与えた。
僕は、幼い僕が記憶したあの日の光景を一生忘れないと思うのだ。
現に、今でも鮮明いに、しっかりと覚えている。
しかしその記憶は、遠い過去として僕の中にしまわれている。
ずっと時の動くことのないまま。高校一年の僕が、今の僕から見て小学生のように幼く感じてしまうほどに。
事実、幼かったのだ。
今の僕からして一年前の僕なんか。人の死をほぼ目の当たりにせず、大量に流れる鮮血を見たこともなく。
ただ幸せに生きていただけの僕は、一生忘れられない衝撃を知らない僕は、今よりもずっと子供だった。
見た目的には大して何も変わらない。
しかし僕の心は、一年間で何年も年を取ってしまった。
年にそぐわないほどの膨大な量のデータを、心に刻み込んでしまったのだ。

「なんで、そう思うんですか?涼ちゃんが・・・殺されたって」

小さい声で、しかし確実に思いのこもった声で磨里が発した言葉は、僕には理解できないほど重たかった。
きっと信じたくないんだろう。
姉が死んだだけでも、それこそ膨大な傷を負ってしまった心にさらに大きな傷が覆いかぶさろうとしているのだ。
きっと心が、反射的に。人間の心理的に拒絶しているのだろう。
年に似合わない傷を一人で背負うことに。

「まぁ、確かな情報があるわけじゃないんだけどね。涼架は、年度も刺されていただろう?―刺されていたんだ。何度も。その命を少しずつ削るように」
「・・・見ました。涼ちゃんが酷く傷を負ている姿・・・」
「僕も見た」
「・・・そうか。自分で死ぬのなら、あんな風に何度も自分を指さなくてもよかったはずだ。もっと確実に、一度で仕留めればよかったはずなんだ」

そう、沢口の言葉は、あくまで彼の推測。憶測であって確実tな証拠がない。沢口が言っていたように。
しかし沢口の言葉はやけに現実味がありすぎてどうしてか信じてしまいそうになるのだ。

涼架が、誰かに殺されたのではないのかということを。


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