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交わした約束の有効期限

1: フレット☆2017/05/15(月) 11:41:56 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
久しぶりに書いてみたくなったので、書いてみようかなと思います。

―交わした約束の有効期限―


誰が好きとか、誰と誰が付き合っているとか、誰は誰が好きだとか。
そんな話題が僕の周りに出始めていた。
時に、「石門君は?」
なんて聞いてくることもある。
僕は、正直どうでもいいと思うのだ、そういうことは。

「いない」

そう答えれば、相手は必ず、「ふぅん」
と僕に興味を失う。
恋とか、小さいころはあこがれてたかもしれない。
ただ、今はどうだっていいのだ。

「お前、悲しいやつだな〜 青春楽しめよ?」

なんて言われたこともある。
僕は、青春とかどうでもいいし。
ていうか。
お前だって彼女とかいないだろうがっての。

「青春だぞ?」
「青春ってなんだよ」
「・・・・」

そんな会話も常習犯。
僕は、まったく興味がないのである。
この世界の恋というものに。



「沢口くーん!」
「キャーッ!今、手振ってくれたよね?!」

帰り際、廊下でたびたび女子の歓声を耳にする。
何が楽しいのだろうか。
あの大勢の女子たちは、あいつに恋をしているのだろうか。
可愛そうに。
あいつが選ぶのは、一人だけなのに。
そもそも、あの中から選ぶとは限らないのに。

沢口 抄黄 さわぐちしょうき

僕も、知っている。
いや、こんな僕でさえも知っている。
そう言ったほうがいいか。
ルックスは、いいのではないかと思う。
あいつみたいだったら、青春楽しめとか言われないのだろうか。
言われないよな。
むしろ、分けろとか言われてそうだ。
青春を分けろって、なんだそれ。
自分で考えておきながら、バカらしくて笑ってしまう。

ただ、思うことがある。

「あんな風だったら、もう少し。生きることも楽しかったのだろうか」

女子の歓声も聞こえない静かな廊下で呟いた。


11: フレット☆2017/07/29(土) 13:16:13 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
今更凉架のことを知ったって意味ない。
そう言おうとしたのに、言えなかった。今言ってしまったら、コイツの全てが無くなってしまうんじゃないか。
そう僕の心の中の何処かが、一瞬でもそう思ってしまったから。
僕の従兄弟で、凉架を好きで、全てを知ってる(?)。
本当なのか。
何一つ、僕は沢口の言を知らない。
でも、沢口は僕の言を知ってる。全て。
それって、

「不公平じゃん」
「え、何?」
「あ、いや。声に出てた?」
「だから反応してるんでしょ」
「そうか」
「で、何が不公平?」


12: フレット☆2017/07/31(月) 13:05:03 HOST:fl1-119-244-131-16.ngs.mesh.ad.jp
「沢口は、僕の事全て知ってるんだろ」
「うん」
「でも僕は何も知らない。それって、不公平じゃないか」
「そう、だね」
「だから、これからは、僕の質問にできる限り答えてもらう」
「いいよ」
「即答」
「でも、君が僕の情報を必要とするときが来るのかな」
「来るよ。必ず。もう少ししたらね」
「石門にしては随分はっきりと」
「まぁね。じゃあ」

僕はそれっきりにして、自分の教室に入った。
沢口も、隣のクラスに入っていった。


13: フレット☆2017/08/20(日) 15:15:28 HOST:fl1-119-244-128-246.ngs.mesh.ad.jp
「えー!何々?!石門君って沢口君と仲良かったの?」
「え、ホントに?」

僕が教室に入った途端女子からの質問攻め。
なんで、僕がこんな目にあわなきゃいけないんだよ。
これも全部、あいつがモテすぎるせいだ。
僕は何にも悪くない。
ただ、今になって出てきた、僕の身内であり、涼架の関係者。
嫌でも警戒していなければならない存在だった。

「別に、そこまで仲いいわけじゃないよ」
「そうなの?」
「でも喋ってたでしょ、さっき」
「まぁね」

しつこい。
僕はただ、それだけを思った。
女子って、しつこいな。
面倒くさい。
初めて、僕はそんなことを思った。
それは、僕が周りの人に何の興味も持っていないということだった。
今までは。
涼架と沢口の一件のせいで、気が抜けなくなってしまった。
いつ、沢口のように出てくるかわからない。
僕は、どうしたらいいんだろう。


「沢口、ちょっと」
「なに?君から話しかけてくるなんて、珍しいね」
「それはどうでもいいんだ。手伝ってほしいことがあるんだ」
「・・・・・。君が何絵お考えてるかはわからないけど、いいよ」



「なに、何で君の家なの」
「いいから」

僕は、沢口にどこに行くとも伝えずに、僕のうちまで引っ張ってきた。
それは、沢口がいないとできない、僕から母への試し技、だったから。
沢口が疑う気持ちもようわかる。
だけど、これは

「お前じゃないとできない仕事なんだ」




14: 影山☆2017/08/22(火) 16:38:34 HOST:sp49-97-92-127.msc.spmode.ne.jp
中学三年になった私は、
大好きな先輩と会えなくなった
心が痛くてたまんない
先輩の卒業式泣いちゃったな。
先輩の卒業式...
先輩に告白しないともう
会えない、、
でも涙が止まんないどうしよう
先輩が私の方に来て、
「大丈夫ですか?!」
大丈夫なわけないじゃん
「大丈夫です!」
「そっか良かった
泣かないでくださいよ」
「だって先輩が
卒業しちゃうんですもん」
アナウンス「中学三年の人体育館前に来てく
ださい」
「もう行かないとΗ


15: フレット☆2017/09/22(金) 20:48:58 HOST:fl1-119-244-128-246.ngs.mesh.ad.jp
荒らしのお方ですか?
でしたら、お帰り下さい。
ですが、貴方の恋の続き、個人的には気になります。
年の差恋愛好きなんです。
設定的に。
それでは

「ただいま」

僕はただ一言、それだけ言って玄関を開けた。
目で入れ、という合図をした。
それを察したのか、沢口が無言でうなずいた。

「あら、早かったのね。あ、」

一言だけそう言って、無言で目を見開いた。
つまり、母さんは、こいつを知ってるということ。
だと思った。

「お友達?」
「っ、はい」

その会話で、僕の中にあった疑問が確信に変わった。
やはり、僕は間違っていなかったんだ。
母さんに、兄弟なんていなかったんだ。
沢口は、僕のいとこなんかじゃなかった。

「沢口、中で話そう」
「わかったよ。全部、話すよ」

やけに、部屋が暗く見えた。


16: フレット☆2017/11/03(金) 20:14:50 HOST:fl1-119-244-128-246.ngs.mesh.ad.jp
白いソファに僕が座り、その向かい側のもう一つのソファに沢口が座る。
母は近くのドアに寄りかかっている。
暗いと思っていた部屋は、カーテンのせいだったことがわかり僕は会話に入る前にカーテンを思いきり開けた。
日の光が入り少しだけ色彩を取り戻した我が家は今から少し深刻な話をする場所としては、あまり合わなかった。
それでも、暗い部屋よりは明るい部屋のほうが整っている沢口の顔が生える。
そのせいか自分までもが役者になった気分になってしまう。

「話してほしいんだけど」

僕の言葉に沢口は何を言うまでもなくうなずくだけだった。
そして少し重そうに口を開いた。
ギシッ― とどこかの天上が軋む音がした。

「俺さ、お前のいとこだって話しただろ。でもさ、」

『嘘なんだよ』

の言葉を期待していた僕の心に、沢口の言葉は、大きなダメージを負わせることになった。

「でもさ、俺本当はお前の兄弟なんだ」
「は、はぁ?」
「な、なんですって?!」

僕よりも大きなリアクションをしたのは母だった。
それまで黙っていた母がいきなり大声を上げたから、僕の肩がはねた。
沢口なんか目を見開いている。
そんな僕たちをよそに、母はこちらに詰め寄ると沢口の前に立った。

「あぁ・・・」
「な、なんだよ、変な声出して。怖いって」

カーテンを開けておいてよかったと思った。
これで開けていなかったら、ただのホラー映画のワンシーンになってしまうところだった。
大きく開け放たれたドアは、母の重みが無くなったのを悲しむように冷たい風を入れてくる。
二階の窓が開いているのかもしれない。

「似てると思ったのよ。そう。貴方が」
「え、あ、その」

うんうん。
と一人で納得している母を見て、僕らはどうしようもなくなてしまった。
シリアスな雰囲気になると思っていたのが、とんでもない方向に曲がってしまっている気がするのだ。

「幸汰。子の子はね、本当にあんたの兄弟なのよ。行き別れてしまった兄弟」
「いや、同級生なのに?」
「そうよ」
「双子じゃなくて?」
「そうよ」

母は沢口を見つめたままうなずいて、そのまま沢口の隣に座り、僕にすべてを話してくれた。
本当だったら、沢口に聞こうと思っていいた僕が、僕だけが知らない話を。

「あんたが生まれてすぐ、私は離婚したのを、知ってるわよね。当然だけど。その後、私がもう一人授かっちゃってね。けれどその子はあんたたちのお父さんが連れて行っちゃったのよ」




17: フレット☆2017/12/25(月) 17:17:52 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
「て、ことは。俺たちは兄弟ってこと。判った?」
「判った。でも今になってどうしてこっちへ来たんだ。それに、離婚したといっても、僕たちが実の兄弟だったのなら一年に一回でもいいから会わせてくれたらよかったのに」

僕が不満を一気にこぼすと、母はため息をついた。
少し言いすぎたかもしれない。
でも、今の僕が心から思った事だった。
もっと早く僕と沢口のことを打ち明けてもらっていたら、もっと早くに対処できたかもしれないのに。
涼架に、本物のこいつを見せてあげられたのに。
同じ血液が流れているのに、容姿も苗字も違う。

「涼架にも、お前を見せたかったな」

呟きが、天井に吸い込まれていった。


18: フラット☆2017/12/26(火) 13:38:05 HOST:p76edae13.hkidnt01.ap.so-net.ne.jp
私、バカ、アホ、デブだよ‼ 誰でも私をいじめていいよ♥♥♪♪


19: フレット(sage)☆2017/12/27(水) 18:10:44 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
僕の呟きが完全に天井へ吸い込まれるはずもなく、その言葉は沢口の耳にも、母の耳にもしっかりと聞き取れていた。

「これが、僕の兄弟だって。お前を紹介してやりたかったよ」
「・・・何で?涼架がいないことを、まだ俺に・・」

そこで沢口の言葉は止まった。
本人は止める気なんてなかっただろう。
きっと、味合わせる気か、やら何か言っていただろう。
しかしそうできなかったのは、形の言い沢口の頬に流れる止まる気配のない涙が伝っていたからだった。
その涙は、まるで沢口に言葉のつずきを言わせないようにするように流れ続けていた。

「大丈夫?」

母が小さい子供に訪ねるようにやさしく沢口に声をかけた。
沢口は小さくうなずくと、また僕のほうを見た。

「お前に、嘘をついていたのは悪かったと思う」
「別に、いい。僕もさっきは・・。お前の心情も考えずに、ごめん」

沢口は僕の謝罪を受け取ると、急に真剣な顔になった。
今までの泣き顔や少し感情的になった顔はずべて演技だったのかと疑いたくなるくらい。
沢口はおもむろに体を前に倒すと、その先の言葉を発するのを一瞬ためらった。
しかし僕がうなずくのを見てからか、重そうに口を開いた。

「お前、涼架のあの事件がどう処理されたか、知ってるか」

いきなりの問いに驚きつつ、しっかりと首を振った。
涼架の事件。
つまり、涼架の命がなくなったあの事件のことだろう。



20: Romanesque(sage)☆2017/12/27(水) 20:12:32 HOST:pc10208.chukai.ne.jp
控えめに言いますね。
神ですか!?
文才を分けて欲しいものです(笑)
更新がんばって!!!


21: フレット(sage)☆2017/12/28(木) 16:48:56 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
ありがとうございます!
本当に!
お互い頑張りましょうね!


22: エム猫ちゃん ディア& (DQR3XSYjuU)☆2018/01/05(金) 15:40:37 HOST:pc10208.chukai.ne.jp
はじめまして!
更新頑張って下さい!
Romanesqueさんも言ってる通り、文才スッゴ───(ノ)´∀`(ヾ)───ィデスね!
( ´-` ).。oO ( ♡応援してるゾ♡ )



23: フレット(sage)☆2018/01/13(土) 21:26:56 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
ありがとうございます!
励みになります!

窓ガラスを突き抜けるようにして部屋中に響くサイレンの音。
平和だった家の中に少なからず緊張が走る。
カーテン越しに見える赤いライト。
回転の最中に見える影と赤のコントラストが一層緊張感を呼び込む。
カーテン越しに見えるライトは、つまり近くで事件が起こったことを物語っている。

「何かあったのかしら・・?」
「判らないけど」

母が心配そうにカーテンを少しだけ開ける。
その様子を少し見てからもう一度テレビに目線を移した。

「あ、あら?」
「何?」

母の驚きと不安が入り混じったような声に一抹の不安を覚えた。
頭のどこかが、何か良くないことが怒ることを予感させる。
急に心臓が高鳴りだした。
まるでテストを返される前のような感覚。


そこまで思い出して、僕はようやく現実に戻った。
あの時の鮮明な記憶を思い出して、少しだけ頭痛がした。
今でも思い出すと頭がいたくなるし心が苦しくなる。
自分の無力さを知ったあの日。
涼架を好きだと、好きだと知ったあの日。

「あ、そうか」

好きだと、知ったんだ。
僕はあの日、涼架を好きだと。
知ったんだ。

「どうした?」

沢口の心配そうな声も、母の顔も。
僕には見えなかった。
沢口に抱いていたあの微妙な感情も、沢口の思いを聞くたびに自分の中で湧き上がる、反抗じみた感情も。
今ならわかる。
全部涼架が好きだったから。
自分の罪悪感と沢口への苛立ちも全部。

「何でもない。今日は、もう終わりにしよう」

今更気が付くなんて、僕は・・・。
世界で一番の不幸せものだ。
違う、一番の馬鹿者だ。



24: フレット(sage)☆2018/01/21(日) 20:08:34 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
沢口は帰り際、またね。
と呟いた。

「大丈夫?」

母の心配そうな声は、今の僕には響かなかった。
大丈夫、と頼りなく掠れた声で言いながら、精一杯の笑顔を見せた。
その笑顔は、母の顔には笑顔に見えただろうか。
まだ何か言いたそうな母を残して二階に上がった。
自分の部屋に入ったと同時に苦しくなった。
フローリングの床に透明な滴が2つ山を作った。


25: フレット(sage)☆2018/01/22(月) 23:53:57 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
『泣かないでよ、全くもう』
今すぐ叱って欲しかった。
凉架の、笑った顔が見たかった。
今になってやりたいことが浮かんでくる。
何十回も見てきた凉架の顔が急に愛しくなった。
手を伸ばしても絶対に届かない場所にいる。
カーテンが沈みかける夕日で赤く染まっていた。
それはまるで、あの日の川原のようだった。

「あ、あぁ」

小さく掠れた声しか出せずに、手を伸ばした。
その手が誰かの手をつかむわけ出でもなく、いく宛のなくなった手は空気をつかむ。
いつもとは違う、生々しい空気を。
赤く染まった川原。
赤に反射して時折光の入る川。
いつもの夕方の景色は、地獄のように怖かった。
凉架の血の気を失った手が何かを求めていた。
一年前の僕には何か判らなかった。



26: Romanesque☆2018/01/23(火) 18:12:44 HOST:pc10208.chukai.ne.jp
めっちゃ更新されてる.。゚+.(*''*)゚+.゚

27: フレット(sage)☆2018/01/23(火) 23:52:24 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
頑張って更新してます!
お互い頑張りましょうね!

凉架が何を求めているのか。
この世界から旅たつ前に凉架が最後に願った何か。
凉架の居ないこの世界で僕はどうしてその答えを知ることが出来ようか?
最後に凉架と交わした約束。

「絶対に、自分を見失わないで。自分で自分を見失ったら、どうしようもないよ」

『だから、お願い。ずっとそのままでいてね』

別に凉架が口にしたわけではなかった。
ただ必然的に、そう感じた。
この約束がいつ破られるかは判らない。
もしかしたら、一生破らないかもしれない。
僕が破らないことを、凉架は望むのだろう。
凉架がそれを望むのなら、僕は一生守っていこうと思う。
僕はあの日の凉架の手を今ようやく掴めたような気がした。

ポコン。
机の上から聞こえた音は今まで聞いた中で一番現実味のある音だった。
きっと昔に遡りすぎて感覚がおかしくなっていたのだろう。
今母にあったら懐かしくなるかもしれない。
机の上からの音は、スマホにメールが届いたのを知らせる音だった。
沢口からのメールだった。
珍しいな。
何て思いながらロックを解除してメールを読んだ。
ただ一言書いてあった。

『復讐しよう。凉架を殺した犯人に』

しばらく、動けなかった。


28: フレット(sage)☆2018/01/25(木) 00:31:47 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
復讐。
口で言うのも、言葉を書くのも簡単に行える。
でも、この場合の復讐は、相手に少なからず危害を加えるということだろう。
凉架を殺したやつはいまだ捕まっていない。
僕だって、捕まってほしいと思う。
このままそいつが逃げ、凉架を殺した汚ない手で生きる。
許す、なんて一生できないと思う。
ただ僕には、凉架と約束したから。
自分を見失わない、って約束したから。
出来ない。
復讐なんて出来ない。
沢口は、どんな気持ちで僕に送ってきただろう?
断ることもできる。
出来ない、と自分がいっているのだし、それが一番だと思う。
その思いに反するように、僕の指は動いた。

『いいよ』

たった三文字。
それだけの言葉には、どんな言葉よりも、僕には重たかった。


29: フレット☆2018/02/04(日) 00:20:25 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
いいよ、なんてどうして簡単に打ってしまったのだろう?
今更考えを巡らせたところで何か現状が変わるわけでもない。
やっぱり止めよう。
そう打つことも可能ではあった。
しかし、無理だと思った。
だから現状は何も変わらない。
いいよ、と打ったのが自分の考え、本心であるとは到底思えなかった。
正確には思いたくなかった、といった方がいいのかもしれない。
凉架がこの世界にいない寂しさや、自分の無力さで凉架を無くしてしまった。
しかし、簡単に復讐を認めてしまった。
それは僕のどこかに、沢口と同じ気持ちがあるのかもしれない。


30: 青葉。.:*・゜☆2018/02/04(日) 15:49:31 HOST:pc10208.chukai.ne.jp
(神ω神)
やべぇ!!!
BL書いてる人ですよね?
ハイキューの.。゚+.(*''*)゚+.゚
どっちも頑張れっ♡


31: フレット☆2018/02/04(日) 16:33:55 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
青葉さん、有り難うございます。
そうです、ハイキューで書いてました。
すぐ荒らされましたけど・・・。
更新頑張ります!

もし、自分がもっと強かったのなら。
自分がもっと大きかったのなら。
何度そう考えただろうか。
凉架がこの世から消えて、信じられずに疑ったまま終わった葬式。
棺の中から凉架が笑顔で僕に笑うのではないか。
そうしたら僕はあえて驚かないでおこう。
そうしたら凉架、どうするかな。
子供のような思考で、それでもちゃんと涙を流しながら、凉架を見送った。
凉架の友達も沢山来ていた。
その中には勿論僕の知っている人もいた。
しかし誰一人として声をかけようとも思わなかった。
僕に声がかかることも無かった。
昔と言いがたい昔。
僕にとっては遠い昔。
昔から引き剥がされるように机の上のバイブが鳴った。

「明日、放課後駅で待ってて」

展開が進んでいく。
もう僕が何を言ったところで無意味だろう。
沢口に考えはもうすでに僕には止められない。
止められるとしたら、凉架だけだ。

沢口の夢にでも凉架が出てきて止めてくれることを願って眠りについた。


僕の願いは凉架に届かなかったらしく、予定通りに沢口が駅に待っていた。
階段をかけ上がった僕の息は耐え絶えだった。
沢口を一度凝視してから、耐え絶えだった息を飲んだ。

「ひぅっ!?」

声とも似つかぬ声を出して、沢口のすぐ右に目を向けた。
見たことのない制服を着ていた。
毛先が肩にほんの少し着いている金色にも見える茶色の髪。
白いベストに濃紺のスカート。


32: フレット☆2018/02/05(月) 23:56:18 HOST:fl1-119-244-130-111.ngs.mesh.ad.jp
白色のソックス、黒の靴。
髪色を除けばごく普通の学生だった。
しかし僕は、そんな彼女から目が離せなかった。
今目の前にいるのは、何時だったか僕が駅の改札口で見かけた、凉架にそっくりな彼女だったからだ。
最初は沢口の彼女かと思った。
こんな大切なときに彼女を連れてくるなんてどうかしてる、と思っていたのだ。
しかし、彼女の姿を改めてしっかり認識してしまえば、沢口と彼女がそんな関係ではないことは見てわかる。
それに、沢口は凉架が好きなはずだ。
それなのに彼女なんてつくったら、もし本当の彼女だったとしても、凉架の名前を出して怒っただろう。
それも際限はしっかり考えただろうが。
学校の風紀を乱す訳にも、大勢の前で怒りの声をあげる訳にも、いかなかったから。
凉架と、約束したから。
その約束に有効期限があった訳ではない。
しかし凉架がいなくなったその日から僕は必然的に、約束を守っていた。
凉架の中では、自分。もしくは二人の内どちらかが死ぬまで、が有効期限だったかもしれない。
しかし、今の僕が思う有効期限は、最後に残ったどちらかが死んでしまうまで。
といっても凉架は何の約束もしていないから、僕が消えたらそこで終わりだったのだろうが。

「えーっと」

何も言わなくなった僕を現実に戻してくれたのは彼女の一声だった。

「しっかりしろよ」
「悪い」

二人に謝りながら体を起こし背筋を伸ばす。

「私は、磨里です。高橋磨里。高橋凉架の、妹です」
「え」

最後は小さくなりながらも、最後まで話してくれた。
しかし僕は衝撃的過ぎて、もう一度凉架の妹。磨里・・さんを凝視した。
だから、似ていると思ったのか。
駅に響くあアナウンスの音が、新たな始まりを予感させた。


33: フレット☆2018/02/07(水) 21:54:14 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
アナウンスを聞きながら尋ねた。  

「磨里・・さんでいいのかな?」

どう呼んでいいのか判らずに確認をとった。
妹、ということは呼び捨てでもいいような気がしたが、もし彼女が不満を抱いてしまったら困る。
沢口が一度でも手本として呼んでくれたら良かったのだが、残念ながらそんな機会は無かった。

「あ、えっと。呼び捨てで、良いです」

やはりこんな質問には慣れていないのか、濃紺のスカートを小さい手で握りながら、歯切れ悪く答えてくれた。
僕は答えが反ってきただけで安心した。
一応確認をとっておいて良かった。
一応予想とは合っていたが、磨里がどんな人なのか知らない中でも下手に逆鱗に触れてしまってはいけない。
女は、割と面倒臭いと知っていた。
沢口のファンと、凉架のお陰で。

「じゃあ、呼び捨てでいくよ」
「はい」

磨里がスカートから手を離しながら微笑んだ。
その顔が凉架に似ていたものだから、思わず綺麗な頬に手を伸ばしかけた。
しかし、手が腰より少し前に出たところで踏みとどまった。

「じゃあ、あっちに行こう」

沢口の指が指した方向には、駅代表とも言えるカフェがあった。
確かに美味しいし、オシャレではあるが。

「並ばないと入れませんよ、人気あるので。予約とか無かったですよね、確か。来月からなら在るみたいですけど」

磨里がカフェから沢口に目線を戻しながら僕が思っていた事と全く同じことをいった。
磨里の言葉に、僕も便乗させてもらった。

「駅から出れば、人があまり来ない旨い店があっただろ?確かに、此処みたいにオシャレじゃないけど」

それに、きっと多くの人がいる場所ではすべきではない話だ。
聞かれては困るし、多くの不信感と不快感を与えることになるだろうし、制服を来ている今、風紀を乱す訳にはいかない。
少々面倒な事まで考えなければいけないが、悪い学校ではない。
それに、僕の予想は間違っていないはずだ。
僕と磨里の話に、沢口はしばらく考えてから、深く頷いた。
それを合図に、僕たちは駅を後にした。


34: フレット☆2018/02/08(木) 23:59:53 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
駅を出ると、冷たい風が肌に突き刺さる。
しばらく歩いただけで痛みそうな寒さだった。
磨里も寒そうにマフラーを口元まで埋めている。
どうしてか沢口だけは寒そうでなかった。
背後にはまだ人が多く暖房設備の整った駅がある。
あの空間に戻りたいが、出来ない。
すれちがう通行人もそれぞれに防寒対策をしている。
磨里はいつしか僕の隣にいた。
僕も一応マフラーをしているが、これだけでは暖かくはならない。
ポケットにカイロが入ってはいるが、手を突っ込みながら歩くことはできない。
もう少し我慢すれば暖かなカフェに入れる。
そう言い聞かせて、冷たくなった手を固く握った。
後ろに沢口の気配を感じながら目的地へと歩いていく。
先程のように賑やかな場所ではなく、裏通りにある店だ。
人もまばらになり、目的地が近づいてきた時、隣にいた磨里が口を開いた。

「私、石門さんのこと聞いてたんです。よく、姉が話してくれました」

それだけ言うと、再びマフラーに口元まで埋めてしまう。


35: フレット☆2018/02/10(土) 22:10:49 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
「凉架は僕の事、何て言ってた?」

僕が恐る恐る聞くと、磨里が目線をこちらに寄越した。
悪い答えが帰って来ない事を願いながら返答を待った。
再び濃い茶色のマフラーを下ろした。
直後、白い息がフワッ と放たれる。
主を無くした息は、遠い空の彼方へ消えていった。
それを見届けてから磨里が口を開いた。
第一声が発せられる直前に大きく心臓が脈を打った。
磨里がもう一度僕に向けた黒い瞳は、その中に闇を抱えているかのようだった。
引き込まれるー 直感的にそう感じ、目線を下へ落とした。
磨里は僕へ冷たい瞳を向けたままだった。

「覚えてないです。なんか、忘れちゃってるみたいです。姉の事は覚えてます、でも。姉が貴方の名前を出した後の言葉は・・・覚えてないです」

衝撃的で、言葉が出てこなかった。
僕のことだけ忘れる、というのが理解できなかった。


36: フレット(sage)☆2018/02/18(日) 13:13:21 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
じゃあ、君は・・・。
再び思考を巡らしかけた時、今度はマフラーの下からくぐもった声が聞こえた。

「だから、貴方のことは沢口さんに教えてもらいました。そしたら・・・。少しずつですが、記憶が戻ってきたみたいです。たぶん会話するには十分な情報はあるはずなので・・・」

そこまで言うと、再び黙ってしまった。

「そろそろか?」

沢口が後ろから問いを投げかけてきた。
磨里がいる右の方を見ると、先ほどとはうってかわり古い民家が立ち並ぶ住宅街に入っていた。
古いといってもそこそこ綺麗ではあるし、田舎ほどではないけど。
割と白い壁が多い住宅街の中に、磯とすら思える雰囲気を放つ通さ菜喫茶店があった。
しかし、駅の喫茶店が混んでいればっ子へ流れてくる客も少なくない。
しかも、近隣住民にも大切にされていた。
店長さんもいい人で悩みも聞いてくれるし・・・。
駅の喫茶店が混んでいたためにこの喫茶店に流れ込んだのは一年も前だ。
しかし、この喫茶店を始めてみた時祖母の家を思い出して少し感慨深いものがあったことは今でもはっきり覚えている。

「・・・こういうところ、私嫌いじゃないです。姉も・・・涼ちゃんも嫌いじゃないはずです」
「・・・え」

磨里が涼架を姉ではなく涼ちゃん、と呼んだことに声を出してしまうほど驚いた。
普段僕は驚いても心の内でそっとしまい込むタイプだ。
だいぶ珍しいのかもしれない。いや、ただ僕が人に心を開いていないだけだ。
僕が驚いたのちに自己嫌悪に浸っている間、磨里は頬を少し赤らめていた。

「や、あの。いつもそう呼んでいたので…。つい」
「俺はいいと思うよ。姉妹って感じがする」

沢口が磨里に笑顔を返しながら、僕に目で『素直に驚くなよ、少しは察してやれ』と、言っていた。
あくまで僕の推測であり、僕自身が僕に語り掛けていることでもあるのだが。

カラカラ―
戸を開ける音の後に上につるしてあるベルが鳴った。
その音に迎えられながら三人で戸をくぐった。
フローリングの茶色い床に靴の底をつけて音を鳴らしながら一番奥の席に座った。
人はまばらに座っており、何も考えずに話す、ということはとてもじゃないができそうに無かった。

「じゃあ、始めるね。俺はね。涼架は自殺したんじゃないと思うんだ。涼架は、殺されたんだ―


37: フレット(sage)☆2018/02/19(月) 22:40:22 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
殺された?
涼架が誰かに殺された。しかし、涼架が死んだ事件は河川敷の奥。
光の届かない暗闇で、ナイフを刺されて死んでいたはずだ。
幼い僕が見るには衝撃の一言では表せないくらいのものを与えた。
僕は、幼い僕が記憶したあの日の光景を一生忘れないと思うのだ。
現に、今でも鮮明いに、しっかりと覚えている。
しかしその記憶は、遠い過去として僕の中にしまわれている。
ずっと時の動くことのないまま。高校一年の僕が、今の僕から見て小学生のように幼く感じてしまうほどに。
事実、幼かったのだ。
今の僕からして一年前の僕なんか。人の死をほぼ目の当たりにせず、大量に流れる鮮血を見たこともなく。
ただ幸せに生きていただけの僕は、一生忘れられない衝撃を知らない僕は、今よりもずっと子供だった。
見た目的には大して何も変わらない。
しかし僕の心は、一年間で何年も年を取ってしまった。
年にそぐわないほどの膨大な量のデータを、心に刻み込んでしまったのだ。

「なんで、そう思うんですか?涼ちゃんが・・・殺されたって」

小さい声で、しかし確実に思いのこもった声で磨里が発した言葉は、僕には理解できないほど重たかった。
きっと信じたくないんだろう。
姉が死んだだけでも、それこそ膨大な傷を負ってしまった心にさらに大きな傷が覆いかぶさろうとしているのだ。
きっと心が、反射的に。人間の心理的に拒絶しているのだろう。
年に似合わない傷を一人で背負うことに。

「まぁ、確かな情報があるわけじゃないんだけどね。涼架は、年度も刺されていただろう?―刺されていたんだ。何度も。その命を少しずつ削るように」
「・・・見ました。涼ちゃんが酷く傷を負ている姿・・・」
「僕も見た」
「・・・そうか。自分で死ぬのなら、あんな風に何度も自分を指さなくてもよかったはずだ。もっと確実に、一度で仕留めればよかったはずなんだ」

そう、沢口の言葉は、あくまで彼の推測。憶測であって確実tな証拠がない。沢口が言っていたように。
しかし沢口の言葉はやけに現実味がありすぎてどうしてか信じてしまいそうになるのだ。

涼架が、誰かに殺されたのではないのかということを。


38: フレット(sage)☆2018/02/21(水) 23:06:42 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
確かに自分でその命を今すぐにでも絶ってしまいたいのなら、一度で確実に死んだほうがましだ。
もし、涼架がその命がこの世界からなくなることを少しずつ感じていたかったのだとしたら。
だとしたら、涼架が自分で命を絶ったのも信じられる。
人の命の話というものは、何か確証的なことがないと、理論的、科学的証拠がないと信じられないのだ。
ただの憶測で話したところで、何一つ結論にたどり着けるわけではない。
それは沢口だって判っているはずだ。もちろん磨里も。

「もし涼ちゃんが誰かに頼んだとしたら、どうですか」
「誰かに・・・というのは?」
「今の世の中、ネットで誰かに自分の命を絶ってほしいと書けば、暇でくだらない生活を送っている奴らは速攻で引き受けますよ」

磨里らしくない言い方に少し度肝を抜かれつつ、磨里の言い分もこの世の中十分にあり得ると思う。
事実、そういった類のニュースはなかなか消えることはない。
磨里の考えの方がよっぽど理論的であると思う。

「まぁ、そうだね。だからさ、見に行こうと思うんだ。だから君も呼んだんだよ」

沢口が磨里に挑戦的、かつ感傷的な瞳を向ける。

「私を、ここに呼んだ理由?」
「そう。涼架の家に行こうと思うんだ。実際に涼架の家に行って見てみればいいよ」
「な、何をですか?・・・もしや、涼ちゃんのパソコンを?確かに、まだとってあるみたいですけど」

磨里が疑いの色の見える瞳で沢口を見る。
ここまで沢口に心を奪われない女子もなかなか見ない。
磨里が少し言葉を切ってから、椅子の背もたれに掛けながら口を開いた。
しかし僕は、こんなことを考えていい場ではないと分かっていつつも、つい考えてしまう。
客がまばらであるとはいえ、店主が特に店内を気にせずコーヒーを煎れているとはいえ。
流石に何も頼まないとはいかないだろう。
そろそろまばらな客からの疑問の視線の一つや二つ注がれてもいいはずだ。
何より、僕はここのオリジナルブレンドが飲みたい。
そんなことなど気にもせず磨里は話を進める。

「・・・ですよ。特に涼ちゃんの部屋に入ろうともしないし」

最初の数文を聞き逃してしまった。
何となく予想ができないこともなさそうだが。
特にしようとも思わなかった。
不意に沢口がカウンターまで歩いて行き、店長に話しかけた。
なんといっているか聞こえないが、沢口が一枚の札を出したところ、三人分の飲み物を買ってくるようだ。

「・・・なんか、疲れちゃいました。人の話って、これ程にも重いんですね。実は私も、家に帰るのは久しぶりなんですよ」

磨里が隣から話しかけてくる。

「久しぶり、なのか?」
「ええ。あんな奴と一緒に暮らしていてはまともな生活が送れません。それこそ、私も涼ちゃんと同じ運命をたどっていたかもしれないです」

どこか怒っているような口調で話し続ける。
そしてその口調はどんどん強くなる。

「だから、今は祖母のほうに身を寄せているんですよ。家が近くで助かりましたよ。まぁ、あいつのほうの祖母ですけどね」

そこで磨里の話がひと段落着いた。
ちょうど沢口が器用に三つのコップを運んでくる。
これからまだ、話は終わりそうになかった。


39: フレット☆2018/02/23(金) 22:08:48 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
磨里が言うところの‘あいつ’に予想はついていた。
恐らく、涼架や磨里の父親のことだろう。
母は、ちょうど涼架が15の時に亡くなっていたはずだ。
幸い涼架の試験も終わっていたし、父親一人で娘二人を支えていくには十分な資金財産をあったようだ。
磨里がどうしてそこまで父親を毛嫌いするのかはまだ判らない。
しかし、先程の磨里の話も聞いていれば、自分をここまで育ててくれた父親に対しての感謝の一欠けらも存在しないようだった。

「これでよかったかな?」
「・・・はい、有難う御座います」
「お前、よく僕の好きなのが判ったな。有難う」
「お前、前に俺にここの店の事話してただろ。その時に聞いたよ」

沢口が持ってきたのは、暖かそうな湯気と甘さと少しのほろ苦さに包まれたオリジナルブレンドだった。
磨里には薄くアプリコットのような液体の上に白くやわらかそうに盛られた生クリーム。
更にはチョコソースまでもがかけられた超・ハイカロリーだが女性に人気のある優しく甘い味わいのモカチーノが置かれていた。
沢口が僕と磨里の向かいに座った。
沢口が自分の前に高い音を鳴らして置いたのは、どんな色でも跳ね返してしまいそうなほどに濃い黒。
しかしその香りはどの香りにも負けないほどに気高い。
一緒にブレンドされているであろう香りの弱い豆の存在を微塵にも感じさせない。
繊細だが深みのあるブルーマウンテンだった。
綺麗な白と青色のコップは、ブルーマウンテンの気高さをより引き立たせ、同時に沢口の整った顔も美しく彩る。
三つの香りが一つになって遠く彼方へと引き込まれる感覚をたっぷり十秒程感じてから、沢口が口を開いた。

「質問なんだが。俺の意見に賛成してもらえるかな?」

沢口の意見、というのは涼架が誰かに自分の殺人を依頼した可能性を調べる、という行動について、だ。
僕は、それで沢口の疑念が無くなり、本当の涼架の死を感じられるのなら良かった。
しかし、この移行への第一決定権は磨里にあるはずだ。
磨里が嫌だ、といえば僕もそこで引く。
磨里が賛成すれば、そこに僕も否応無く便乗させてもらう。
僕はただ静かに磨里の意向をうかがった。
磨里は甘いモカチーノの生クリームを小さなティースプーンですくい口に運んだ後、甘い液体を少し啜った。
カチン― と高い音を立てた後、磨里が口火を切った。

「いいと思いますよ。私も、涼ちゃんの死についての真実を確かめたいです。それが、自殺であっても他殺であっても」

沢口の目を一心に見据えそう言い切った磨里の澄んだ茶色の目は、涼架に似ていた。
感動で涙が浮かぶくらいに。
これ程までも僕の心を突き動かせる目を見たのは、涼架が最後だった。
しかし今、再び僕の前にその美しい瞳が存在する。

「僕も同意だ」

今度こそ、この一つの穢れもない瞳を守る。
苦みのあるオリジナルブレンドとともにその決意を消せないどこかへ。
涼架との約束を仕舞っている奥深くに、一緒に閉じ込めた。
それは、苦く甘い小さく大切な一生の誓いとなった。


40: (sage)☆2018/02/25(日) 16:20:08 HOST:c043.sk-172.spacelan.ne.jp
雑談欄の小説企画への応募に返事しました。
何かしらの返事を待ってます。


41: フレット(sage)☆2018/02/25(日) 17:19:35 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
僕たち二人の同意を得た沢口は表情の一つも変えず静かにうなずいた。
二日後の土曜日、この小さなカフェ『雅の矢』に昼の一時に集合となった。

「あいつは一時に家を出て、それから朝までは帰ってこないはずです。今まではずっとそうだったし、隣家の麻野さんにも確認済みですから」

磨里がそう言いながら黄色のカバーのついたスマホを小さく掲げた。
液晶画面がライトを反射して沢口の横に小さな円を作る。
僕がそれを見たと同時に、磨里のモカチーノがカップから消えた。
僕と沢口のコーヒーは数分前に消えていた。
磨里が白にピンクのラインが二本上に入ったカップを置いた。

「じゃあ、今日はこれで。石門は、磨里を送ってやってくれ。俺は土曜のために準備をする」
「・・・私、一人で大丈夫です」

僕が判った、というよりも早く磨里が沢口の言葉を否定した。
沢口は一瞬驚いたような顔をした後、小さく首を横に振った。

「こんな危険な話をしているんだ。念には念を、だ」
「・・・判りました。あの、家の近く、でいいので」
「判った」

そこでお開きとなった。


42: 雨模様☆2018/02/26(月) 22:14:19 HOST:p784b7e5e.ngsknt01.ap.so-net.ne.jp
昔からいろんなところであなた様の小説を拝見させていただいております。
どれも読みやすく、話の内容がよく作りこまれていて
読んでいてとても楽しいです。
今回の小説も更新楽しみにしております。
無理をしすぎないように、自分のペースで更新していってくださいね。


43: フレット☆2018/02/27(火) 22:29:53 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
雨模様さん、ありがとうございます。
昔から私の小説を見てくださっていたとは。
これまで頑張って更新して良かったと思います。
今日も更新頑張ろうと思います。
元気になれます、有り難う御座います。

僕達が最初に雅の矢へ来たのは四時過ぎ。
外は茜色に染まり、時折頭上でカラスが鳴く。
沢口は店を出た途端に別れもそこそこに走り出してしまった。
都内へはもう少しだが、空間の違う住宅街はほぼ無音だった。
木々から差す木漏れ日が灰色のコンクリートに小さな陰を作る。
カラスの声が遠ざかる無音の住宅街に二つの足音が住宅の壁に弾かれ大きく響く。
磨里は僕の少し後ろを歩いていた。
凉架が死んでからまともに女子との付き合いをしてこなかったせいか、少し緊張していた。
もしかしたら、大分緊張しているのかもしれない。
傾いた夕日に照らされる磨里の顔はどことなく凉架に似ていた。
小さな体から伝わってくる雰囲気も、澄んだ茶色の目も。
まるで凉架がそこにいるみたいだ、とつい思ってしまう。
しかし心の中でその考えを否定する僕がいる。
凉架はいないんだ、もう会えないんだと。
なんて冷酷だ、と思った。
同時に、それはこの世界では正論であり、当たり前の事であると思った。
自分の心の中の矛盾を整理しきれず葛藤を抱えていた僕の後ろからくぐもった声が投げられた。

「・・・私、バスとか乗らないので、時間かかっちゃいますよ。沢口さんんもいないし、もういいですよ」
「バスとか乗らないほど家近いの?」
「・・・乗り物酔いするんですよ。だから、酔わない凉ちゃんが羨ましかったですよ」

どこか面倒臭そうに聞こえる声の片隅には、凉架を思う妹としての愛情が感じられた。
話がほんの少しずれたが、僕の決意に揺らぎはない。
『じゃあ、ここで帰るよ』
といって別れてそれで磨里に何かあったら目も当てられない。

「家の近くまで、って約束だろ?あれは、沢口とだけじゃなくて僕との約束でもある」

少し上級生っぽく言って見たが磨里には特に効果は無かったらしく、マフラーの下でため息を吐かれた。
そのあと磨里は僕の隣に並んだ。
マフラーの下でほんの僅かな笑みを浮かべてから凉架について話出した。

「凉ちゃんは、いい姉でした。何を言われても、はい って承諾するんです。嫌な顔ひとつせずに」

思い出を語りながら、先程よりも濃い茜色の空を見上げた磨里の目には。
流れる空と、何よりも美しい透明な、純粋な水滴が。
涙が薄く溜まっていた。
下を向くと涙が零れるのか、磨里は言葉を切り、しばらく上を向いていた。

「磨里は、何年生だっけ?」

空いた沈黙を掻き消すように、磨里の顔を見ないまま質問をした。
磨里の話は終わっていないと思うが、磨里が話せない今、僕が質問しても問題在るまい。
磨里は涙を引っ込め、僕の方を潤んだ茶色の目で僕をほんの二秒程見て微かに笑った。
それは、穏やかな微笑だった。
その微笑みは、今まで僕が見た磨里の表情の中でとりわけ凉架に似ていた。

「中学三年です。受験生なんですよ、私」

磨里の言葉を聞くまで、僕は感動に入り浸っていた。
しかし、磨里が受験生だと知った瞬間、感動はどこかへ消えて焦りが生まれた。

「じゅ、受験生が何してるの?!駄目だよ、勉強は?断ってもよかったのに」
「・・・別に」

何度も言われたのであろう決まり文句に表情を曇らせ、声のトーンを磨里は大分落とした。

「いいんですよ。A判定だったし。今は、凉ちゃんの死の方が大切なんです。判ってください」

すがるような瞳で僕を見る。
そして僕に生まれた感情は、同情だった。
そして、再びの愛情。
しかしそれはきっと、もうここにはいない凉架への再びの愛情だった。
しかしそれは間違いようもなく、凉架への愛であると同時に、磨里に向けられた愛情でもあった。


44: フレット(sage)☆2018/02/28(水) 22:50:55 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
凉架へは愛情、磨里へは同情。
各々に名前のついた感情を送った。
でも僕が、心のどこか片隅で、凉架のいない世界を彩る何かを求めているのは知っていた。
そしてそれが、恐らく磨里であることも。
しかし今その思いに本当に気がついてしまえば。
この絶妙な関係は絶対に保てなくなる。
少しばかりだが、磨里が僕に心を開いてくれているのはこの僅か数時間で感じていた。
折角再び僕の世界に彩りが戻りつつあるのだ。
今そこでその進行を妨害してしまえば、それは実に馬鹿げた話だ。
それに、僕が磨里に世界の彩りを委ねたところで磨里がそれに答えなければなんの意味も持たないのだ。
僕の感情にも、磨里への一つ一つの言葉にも。
それこそ、凉架と交わした約束を破ってしまうだろう。
何があってもそれだけはしたくない。
実在しない凉架と僕を結ぶただひとつの、この世界にひとつしかない凉架への道。
この約束は、一生破らない。

「もし凉架が誰かに殺されていたとして、磨里はどうする」

静かだった住宅街から抜け、町中に戻ってきた僕たちの回りには再び賑やかな喧騒が戻ってきた。
それは、今の僕にとってはただの喧しい雑音にしか過ぎなかった。
しかし、いざ町から喧しい喧騒が消えたら、それはそれで居心地が悪い。
世界にへの不満を漏らしながら、喧しい喧騒に掻き消されそうな磨里の声を拾う事に集中した。

「・・・許さないでしょうね。意地でも。しかし凉ちゃんがそれを望んだ、と決定的証拠があるなら話は別ですね」
「そうか」

その場面でも想像しているのか、磨里の顔が少し険しくなる。
僕は、どうするのか。
よく、判らなかった。
人に聞いておいて。
しばらく無言で歩いた。
幸いにも無言でも違和感の生まれない煩さだった。
先程は不満を漏らしたが、今は喧しい喧騒に感謝だ。
僕が人間を嫌いになった理由はそれだ。
自分の都合にあった解釈をし、態度や対応を変える。
自分だってしている、のだが。
どうしても許せはしない。
自分を含め、全員。
心で葛藤を抱きただひたすらに磨里について行った。
急に喧しい喧騒が遠ざかった。
そして再び、静な住宅街が現れた。
しかしそれは先程の住宅街ではない。
当然ながら、雅の矢もない。
少し進んだところに、今でも大切に使っているのか、過疎化した様子のない小さな公園があった。
僕のすぐ左に入り口がある。
そのどこか懐かしさを引き出す公園に磨里も気がついたようだった。
磨里は公園を指差し、

「ちょっと、よっていきませんか?話がしたいです」

実に不思議な一言を放った。


45: フレット(sage)☆2018/03/01(木) 23:57:40 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
沈みかけた夕陽に照らされて輝く遊具は、やはり何処か懐かしさを覚える。

「いいけど」

磨里の提案に承諾すると、その答えが来ることを知っていたかのように然程間も開けず公園へと歩き出した。
公園と言えど広いグラウンド等はなく、白いベンチと赤と青のブランコ、滑り台。そして僅かな芝生。
磨里は迷いなくベンチに座る。
僕に横にどうぞ、と目で促した。
僕も目線で判ったと返して座った。

「私。石門さんに聞きたいことがあって」


46: (sage)☆2018/03/04(日) 07:17:40 HOST:kd027093161234.au-net.ne.jp
小説企画は打ち切りを予定してます。
楽しんで貰えてるのかと思った矢先に、いきなりフェードアウトされて、がっかりもしてます。


47: フレット(sage)☆2018/03/06(火) 00:06:41 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
あぁ、だからスレがなかったんですね。
本当に楽しんで計画は進めていました。
で、フェードアウトというか、私雨に濡れて熱出してしまっていたんです。
ちゃんと報告できたらよかったんですけど・・・。
すいません。
でも、進めてきた計画の内容はとても良かったものだと思います。
いつか小説になる事、もしくはもう一度計画を建て直すことを願っています。
図々しくてすいません。
でも、とても有意義な時間を過ごせたと思っています。

本当に、すいませんでした。


小説は明日更新します。


48: (sage)☆2018/03/06(火) 07:43:32 HOST:kd106139000252.au-net.ne.jp
自身で立てたルールに従って、仕切り直ししたくて消しただけです。
また何度でも企画は立てます。

ただ…気持ちの温度差は強く感じます。
熱があっても、「雨に濡れて熱出て…」とか。
片言の言い訳コメントくらい書けなかったんでしょうか?
片言の発信でも受信側には、0ではなく、0,5は伝わります。
変に格好付ける必要なし、殴り書きでも意思を下さい。
…って部分なんです。
コメントを自由に書ける環境にないなら、環境作りが先です。

毎日、1回か2回の相談では正直、足りません。
5、6回が理想的です。
物語が始まったら相談内容が取り敢えず、倍くらい増えるからです。
もっと、フレットって人物の考えてる事を晒して欲しいのに、とも思ってまし
た。
サイコなシナリオ、甘いシナリオでも良かったんです。
メモに殴り書きしてアイデアを残すとか、までは習慣になかったんでしょうか。

計画は楽しかった、と書いてもらえたのは嬉しい部分です。
逆切れされるよりは嬉しいですが、謝ってくれるよりも、環境を改めてのまたの
参加を期待してます。


49: フレット(sage)☆2018/03/07(水) 19:10:24 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
そう、ですね。
やっぱり書くべきでした。
ごめんなさい。
言うのは簡単ですね。でも、私がやったことは一言では足りない。
でも、もう今何をいったところで現状は変わらないので。
全ての思いを入れて一言にまとめます。
すいませんでした。
やっぱり学生なので、回数は限られます。
だからやっぱり、今はもう無理なんですかね。
もし、環境が本当に整ったら、またアイデア考えさせてください。

「聞きたいこと?」
「はい。その・・・」

今まで滑らかだった磨里が急に押し黙った。
頬には少し赤みが差しているように見える。

「どうした?顔、赤くないか?」
「っ。た、太陽のせいですっ」

磨里は急に荒ぶり出したかと思うと、再び押し黙った。
しかし磨里の頬に差す赤みは更に増しているように思える。
太陽のせい、にしては赤すぎると思う。
しかし僕が再び大丈夫かと聞くより先に磨里が話出した。

「い、石門さんは凉ちゃんのこと。好きなんですか?」
「え?」

磨里は勇気を出して僕に聞いたのだろう。
膝の上で両手をギュッ と握り、頬には一層深い赤が灯っている。

「僕は・・・。うん、好きだよ。凉架が好き。多分、ずっと昔から」
「そう、ですか」

そういうと磨里は下を向いてしまった。

「なんで、泣いて」

小さく聞こえる嗚咽が心配になって声をかけると、今度は急に顔をあげた。
かと思うと、いきなり僕の胸に飛び込んできた。
細い両腕を僕の腰に回し、きつく抱き締めてくる。

「・・・っ。ごめんなさい。でも、私。私・・・っ」

何を伝えたいのか分からないが、磨里は必死に言葉を紡ぐ。

「磨里?」

僕は磨里の茶色の髪に手を伸ばす。
磨里の髪に手を触れると、磨里の体が小さく跳ねた。

「あ、あの。私」

磨里は体を起こし僕に真正面から向き合うように座った。
再び見た磨里の瞳は、薄く涙に濡れていた。
しかし磨里の中にある星は消えていなかった。
純粋で美しい瞳。

「私は、きっと。石門さんが好きです。喋ったのは今日が初めてだけど。私はいつも、見てたんです」

磨里の綺麗な瞳から透明な滴が流れた。
瞳から流れる涙さえも美しく見えた。
そして何より、磨里からの驚愕の告白に驚いた。
というか、無心だった。

「そっか。でも、僕は凉架が好きなんだ。ごめんね」


50: (sage)☆2018/03/07(水) 23:24:06 HOST:c043.sk-172.spacelan.ne.jp
謝ってくれるよりも、できない理由を探すより、どうしたらできるか? 何ならできるか何から変えれるかを考えて欲しい部分です。

どう頑張っても、回数が限られるのなら…。
五回六回分の提案を、何かに書き留めてその一回二回にまとめて書く努力とかしましたか?
前回のコメントを見てる限りでだと、何かしらメモして考えをまとめた分をこちらに書いてくれてる…みたいには、見えません。

あーしたいこうしたい、こんな事もしたいけど、どう調整しましょうかとか。
書いてくれてると、一回の相談分でもかなり違うのではと思う部分です。
そんなこんな角度でも、相談できれば…とは思ってましたが、フレットの見せてくれる晒してくれる部分があまりにも小さいんです。


51: チップ☆2018/03/10(土) 19:27:04 HOST:pc10208.chukai.ne.jp
p(*^-^*)q がんばっ♪

52: フレット(sage)☆2018/03/11(日) 12:15:07 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
そうですか。
確かに、書き留める等の努力をすれば良かったかもしれない。
でもそうすると、毎日来ることは絶対的に不可能でした。
結果論で言えば、毎日来ることも不可能でしたが。
私にはきっと、無理だったんです。
私にはまだ、ただただ純粋な小説しか書けない。
知識なんて殆どない。
貴女みたいな創造力は私には無い。
だったら、努力したらいい。
そうなるかも知れません。
でもそうしたらやはり、毎日来ることは今まで以上に不可能だった。
授業を受けて、部活をして。
課題をやって、そして案を捻り出す。
私は器用な人間ではないので、部活中や授業中に考えを出すのは、到底無理でした。
私が今述べたことは、本当に単なる言い訳に過ぎない。
もう、見苦しいですよね。
無視していいです。
そしてもう、謝るのは止めます。

最終的に行き着く私の純粋な素直な考えは、只一つだけです。

「こんなに迷惑をかけてしまうなら。初めからしなければ良かったのでは。
主様の考えは、知識のない私にも解るほど。
私なんて、不必要だったのでは。
きっと、私は初めから。限界を知っていた」

それだけです。
もう私に付き合うのも疲れたのではないですか?
こんな者に付き合っているより、再び募集をかけた方が良いのでは?
もう御自身もお気づきになっていらっしゃるのでしょう?
貴女の素晴らしいその考えは、どうか。
もっと、その考えを活かせる程の人と共に、小説にしてください。
私はもう、悟りました。
私には、不可能だと。


チップさん、
応援有り難う御座います。
今日中に更新できたら、と考えています。
どうぞ、宜しくお願いします。


53: フレット(sage)☆2018/03/11(日) 16:33:51 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
僕の断りに磨里は小さく首を横に振った。
そのままうつむいたかと思うと、再び両手を膝の上で強く握った。
ふふ、と小さな声が聞こえた。

「判ってた。判ってたんですよ。石門さんが涼ちゃんの事話してる時の顔とか見てると、判るんですよ」
「そ、そんなに?」
「はい。だって、私が石門さんの話をするときと同じ顔してましたから」

磨里が再び顔を上げる。
その顔には赤みがほんの少し薄れ、涙の跡が残る。
茜色の空は、磨里の美しい顔を一層綺麗に彩る。
僕も、磨里が嫌いなわけではない。
むしろ、どこか引かれる部分がある。
でもそれは、涼架に似ているから。
それを、僕は知っている。

「帰りましょう。・・・ここからは、一人で大丈夫。それではまた、日曜日に」
「え、あ。ちょっと!」

僕の伸ばした右手が磨里の右腕を掴むより早く磨里は公園を駆け抜けていった。
また、掴めなかった。
涼架が死んだときに求めていた何かも、磨里の思いも。

「ごめん」

烏一匹の声すら届かない暗い公園で小さく呟いた。



54: フレット(sage)☆2018/03/13(火) 21:32:55 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
上記の間違いを訂正します。
磨里の日曜日、は正しくは土曜日です。

僕は磨里が帰った後、どうしようもない自己嫌悪に浸りながらますます暗くなった道を歩いた。
磨里が僕に必死に思いを伝えてくれたのは、判っている。
でも、僕が磨里に抱いている思いは、間違いなく磨里への思いだ。
でも、本当は。
遠回しに涼架への思いでもあると思う。
僕はきっと、今更になって気が付いた涼架への愛情を、誰かにぶつけたくて。
涼架にそそげなかった分の愛情を誰かのために使いたくて。
それで今、磨里へ思いが強くなりつつあっるのだと思う。
でも自分でも自覚している。
これは、磨里への愛情であると同時に、それは涼架への愛情であり、涼架への思いのほうが大半を占めているということに。

「どうしようもないな。何で、僕はいつもこう。もう少しで掴めそうな何かを逃してしまうのだろうか?」

僕の小さな質問に誰かが答えてくれるはずもない。
聞こえるのは、葉がこすれる音や、車の音。
そして、遠くで鳴く烏の声。
答えなんて、知っているはずなのに。
それを認めたくなくて、信じたくなくて強引に、無理やりに判らないふりをしているだけだ。
本当は、気づいているくせに。

「僕には、涼架の思いを考えて突き止めることも、磨里の純粋な気持ちを受け取ることもできない。僕には、その資格がない。大切な人への気持ちもわからず、人ひとり守れない僕なんかに。」

僕が抱えている葛藤なんか、あの頃の涼架に比べたら、小さくて些細なことでしかないのだろう。
僕は、今磨里や涼架への思いを抱き、苦しみながらも、しっかり息をしているのだ。
真玉は回っている。
自分の気持ちを整理しようと必死に働いている。
僕は、生きようとしている。
涼架は、死んでしまうほどに追い詰められていたのに。
僕の頬を伝う一粒の涙が、完全に沈みかけた夕日に照らされ、輝いた。
そしてその光は、いつまでも僕の瞼の奥に残像が張り付いて消えなかった。
この涙は、この涙には。
何の価値があるだろう。何の意味が込められているのだろう。
恐らく、謝罪と愛情。
簡単な二つの感情。
生まれた時から誰もが持っている人間の出発地点にある大切な感情。
そして、対なる勘定。
それらが今、僕の涙となって、一つに混ざり合って流れていく。
たった一粒のはずなのに、僕の心の中のすべてが出されたように感じた。


「ただいま」

帰ってくる言葉はない。
母は確か、仕事で遅くなるといっていた。
別に構わない。何の問題もない。
でもそうしてか今は。今だけは。
誰かに僕のどうしようもない思いを聞いてほしくて仕方なかった。
沢口には言えない。磨里にも勿論言えない。
父はにも、恥ずかしくて言えない。
実を言えば母だって。
恥ずかしいし、言いたくない。

「疲れてるのかな。」

リビングのドアを開けてそのままソファに深く腰掛けた。
バックはソファの横に放り出し、そのまま目を閉じる。
そして再び、長い思考に陥った。


55: フレット(sage)☆2018/03/14(水) 19:09:38 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
涼架が生きていたなら。
今僕がこうして悩む必要もなかったのだろう。
磨里が苦しむ必要も、沢口が叶わぬ思いを抱いて生きていくこともなかったのだろう。
でも、君が生きていたなら僕は、君の大切さに気が付けずに、君への思いに気が付かなかっただろう。

「涼架。君は、どうしてこの世界から消えてしまったんだ。誰が君を、殺したんだ。」

絶対に届かない疑問を口にした。
たった一つの疑問を口にしただけなのに、胸が苦しくて仕方がない。
行き場のなくなった気持ちは、壁に当たって僕に帰ってくる。

涼架は、誰に殺されたのだろう。
自殺、の可能性も捨てきれない。
でも僕には、涼架が自分で命を絶つ原因が判らない。
磨里は、父親に理不尽的な精神的苦痛を受けていた、と話していた。
だったら、涼架が自殺したとも考えられない。
いや、むしろそっちの可能性のほうが限りなく高まるだろう。
じゃあ、だれかに殺されたという可能性はどうだろう?
僕自身は、他殺の可能性のほうが高いと踏んでいた。
まぁ結局すべて土曜日に判ることだ。
今一人で考えても解決には近づかない。
でも、僕自身として、涼架の死の真相に少しでも近づきたい。
早く、知りたい。という焦りが大きかった。

「涼架。逢いたい。」

僕のささやかな願いは天高く消えてゆき、いつか涼架に届くだろう。
いつか涼架に届くことを願おう。
僕の脳裏にはまだ、僕の頬を伝っていった一滴の涙が張り付いていた。
それは、磨里の涙のように美しくなくて。
涙は残酷な罪の色に染まっていた。
茜色の罪。
あの茜色は、美しいと同時に。
僕には絶対に忘れられない罪の色となった。



「じゃあ、行ってくるから」
「気を付けて、行ってらっしゃい」
「おう」

短い言葉を交わして家を出た。
あの日から早くも二日経ち、僕の考えはまとまらないままだった。
集合時間の午後一時まではまだ一時間ほどある。
移動時間を考えたら、一時少し前には着くだろう。
雅の矢へ行くための電車に乗りながら、二日前の続きを考えた。
自殺か、他殺か。
昼から考えるには何とも物騒な考えを一人頭の中で回転させた。
僕としては、他殺の考えで行こう。

そうこうしていれば、目的地に着いてしまう。
電車から降りれば、いまだ冷たい風が容赦なく差してくる。
空はよどみの一つない晴天だ。
これが夏ならば最高気温の記録更新でもしていただろうか。
ただ凍てつくような寒さの冬には空が何色だろうと関係ないのだ。
冬の仕事は、大地を冷やすことなのだから。
と、一人口に出さずに冬への感情をわけもなくごちた。

「寒いな。」

何となくでマフラーをつけていてよかった。
すれ違う人も皆しっかりと防寒対策をしている。
その中で、見慣れた人物を見かけた。

「磨里」

つい先日、僕に必死の思いで気持ちを伝えてくれた、僕の中の小さな涼架だった。
あの純粋な茶色の瞳は、どうしても涼架を思わせるのだ。
涼架の死への、真実解明と行こうか。


56: フレット☆2018/03/17(土) 22:57:16 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
磨里とあってからも先日の余韻が抜けずに二人とも黙っていた。
気まずい空気の中でやっと雅の矢に着いた。
カフェの前には沢口が立っていた。
始めてみる沢口の私服は顔相応に格好良かった。
イケメンは服も格好いいのか。
同じ兄弟のはずなのに、苦しくなる。
心の中で沢口と比べて劣っていることを実感して意気消沈しながら沢口のところに歩いていく。

「おはようございます、沢口さん」
「おはよう。その服、似合ってる。涼架に似てるね」
「・・・そうですか」
「じゃあ、行くか?」

沢口のテンプレな言葉を聞いたのちに早く進めることを促す。
磨里にそんなテンプレの決まり文句が通じるはずがないだろ。
それくらい判れよ。

「そうだな。磨里、案内宜しく」
「はい、任せてください。」

磨里は沢口に頷きながら前に進んでいく。
大通りから抜けたところをずっと真っ直ぐ進んでいくと右手に雅の矢が現れる。
それからまだ先に歩いていくとまた違う大通りが出てくるのだ。
その大通りに出たら信号を渡り右に曲がる。
そこはまっすぐ進み左。
そこには、まだ新しい家が立ち並ぶ住宅街になる。
大通りにはあらかたの生活用品がそろっているが、もっといい品ぞろえを求めるなら、駅のある通りに出なければならない。
昔は僕も、ここに住んでいた。
涼架の隣家に住んでいた。
でも、涼架が死んでからすぐ引っ越した。
僕は正直反対だった。
涼架が死んでから引っ越すのは、涼架を見捨てるようなことになると思ったのだ。
ずっと一緒にいた涼架が死んだことを信じられずにいた僕を心配して引っ越してくれたのかもしれない。
いや、それは無いな。
母がただ、人が無くなった家の隣家にいたくなかっただけだろう。
でも、何も駅二つ分も離れなくても、と思いはしたが言えなかった。
それはやはり、僕が弱かったから。

「着きましたよ。やっぱり、あいつはいないみたいです。」

磨里が車庫を確認していった。
薄桃色の壁にグレーの屋根。
玄関前には鉢植えがあった。
しかしその中には何も植えられてはいない。
僕が遊びに来ていたときは、季節によって様々な花が植わっていた。
僕が知らない花を、涼架が植えて大切に育てていたのだ。
涼架が死んで磨里がいない今、花を植え育てる人がいないのだろう。

ここで、すべてが、判明する。


57: フレット☆2018/03/25(日) 18:09:17 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
灰色の三段程の小さな階段を上ると茶色のドアがあった。
磨里が茶色のドアを開けると靴が三足程しか無い三和土にだった。
涼架の家に来るのは久しぶりで、覚えていなければいけないのに、いつの間にか頭の中から記憶が無くなっていた。

「靴、少なくね?」
「・・・いや、当り前じゃないですか。ここもうあいつしか住んでないんですよ?」
「なんか、辛辣になってきてない。言葉。」
「そうですかね。早く入らないと閉めますよ。」

磨里は随分僕たちに慣れてきたのか言葉が辛辣になってきた。
それを聞いて僕と沢口は急いで三和土に入った。
少なすぎる靴はどれも黒革のローファーだった。
まだ玄関に入ってきただけなのに生活感の無さが滲みだしていた。

「こっちです。あいつ、今日はいないはずですけど何があって帰って来るか判らないので出来るだけ早く終わらせましょう。」

こっちです、と言って磨里が玄関のすぐ右手にある階段を上って行った。
学生靴を三和土で脱いで揃えてあった灰色のスリッパを履いて磨里の後を追った。
二回には二つの部屋があるはずだ。
右と左に部屋があり部屋の間にはたった一枚の家族写真があった。
―はずだった。
昔はそれぞれのドアに涼架、磨里と名前が茶色のプレートに書いてあったはずなのに、それすらも消えていた。
ますます生活感が感じられない。
階段の上に設置されていた窓にはブラインドがかけられていた。
そのせいで日光は遮られ二階にあるはずなのにまるで地下のようだった。
昔は家族写真があったはずのところには日航が当たらなかったため昔と全く同じで綺麗なまま真っ白な壁色だった。
磨里は迷いなく右の部屋を開けた。

「涼ちゃんの部屋はこっちですよ。パソコン、どこだっけ。」

磨里が入って行った後僕たちも涼架の部屋に入った。
昔は何ともなかったはずの部屋に入るだけでどうしてか脈拍が早くなった。
何も変わっていないはずの部屋は白と茶色で統一されていた。
その部屋は女子らしいというのに近からず遠からずといった感じだった。

「俺もパソコン探すよ。」
「有難う御座います。」
「・・・僕も―」

探すよ。
というよりも先に、涼架の沢山の本の中に同じ色のノートが五冊あった。
涼架の本のコレクションは百冊を優に超える。
その中に五冊の水色のノート。
パソコンを探さなくてはいけないのにノートが気になってしまう。
どうしようか。
心の中で葛藤していたが、少しだけ、とノートを手に取ってしまった。

「・・・日記。」

一ページめくるとそこには―

「・・・私は、死にたい・・・?」

これは、涼架の本心の書いてあるノートだ。
ただの日記ではない。
そう思って、ノートを残り四冊すべて引き出した。

「これ。何か、役に立つんじゃ。」
「お、何それ。日記?俺も読んで―」
「それ、石門さん読んどいてください。」
「え、え?俺は?」
「沢口さんはもう少し一緒に探してもらえますか。高いほうとか私取れないんで。」

恐らく今のは、先日僕が磨里に涼架が好きだと言ってたから磨里が配慮してくれたのだろう。
涼架の本当の気持ちを知ってくれと言わんばかりの目で磨里がこちらを睨んできた。
その磨里の配慮に感謝しつつノートを部屋の真ん中にあった茶色の小さなテーブルに並べた。
それぞれノートには最初の記述から最後の記述をした日にちが書いてあった。
涼架の本心が、判る。
知りたいけど・・・知ってはいけないような気がする。
涼架があの日掴もうとしていたものは、本当は。
何だったのだろう。
僕が約束を守ることで判るのかもしれない。
でも、判らないのかもしれない。
これを読めば、そんなこと何も関係なしに判る気がする。
涼架が本当は何を考えているのか。
涼架が、自殺したのか他殺だったのか。
今は判らない事件の真相も、ここで解決に近づけるような気がする。





58: フレット☆2018/03/27(火) 20:51:19 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
ん、これは・・・。
一番古いノートから見ようとした時、五冊目のノートに宇宙を模された付箋が貼ってあるのが見えた。
ちょうど真ん中の辺りに付箋が貼ってあった。
その付箋は、僕が中学三年生の時に涼架に送った物だった。
付箋、シャープペン、ノート等の文房具セットを送ったのだ。
まさかこんな形で対面するとは考えていなかった。

「・・・何か大切なことでも書いてあるんじゃね?そこから読めば?」
「そうだよな、やっぱり。」

沢口が僕がノートの前で一人悩んでいるのを見抜いたようで、パソコンを探す手を止めて僕にアドバイスを送ってきた。
沢口の言葉で僕の中の迷いが吹っ切れた。
迷わず子冊目のノートを手に取り、付箋の貼ってあるページを開いた。
念のために一ページ前から捲ってみた。
一ページに一日分の日記を書いていた。
普通の日記だろうと思って安楽な気持ちで一行目を通すと、そこから醸し出される何とも悍ましい雰囲気に目を閉じてしまった。
気持ちを落ち着かせるためにたっぷり五秒程目を瞑ってからじっくり読まずに目を通していく。
一言で言って、病んでいる。
死にたい、苦しい。助けて、どうしよう。
そんな暗く、悲しく、やはり悍ましい言葉が綴られている。
あの優しい笑顔も、声も想像できない。
きっと、他のページもこのように見ていて顔をしかめてしまう文字が綴られているのだろう。
だったら、読んでもあまり意味は無いかもしれない。
付箋の付いているページに何か、もっと涼架の気持ちが書いてあることを願いながらページを捲る。

「・・・これは、もしかすると。」

思わず左手で眉間を抑えた。
その体制のまま声を一つ漏らす。
今までの悍ましかった雰囲気は大分薄くなり、読みやすくはなったが今度は二ページに渡って文字が綴ってある。
元から涼架は文字を書くことが好きではあった。
涼架が死ぬ、一か月と二週間二日前。
今度は涼架の日記に一行ずつ目を通した。
ゆっくりと、頭にしっかりインプットするように。
涼架を思い浮かべて、涼架の声で言葉を再生する。
頭を様々なところで使うがために、普通に読むよりも時間はかかるが、涼架の思いだと思えばそれも苦ではなかった。
一行見て判った。
これは、涼架が伝えたかった本当の事なんだと。

私は、どうしても忘れたくない思い出がある。
何かは言えない。
言ったら、消えて行きそうだから。
でも、もう心配いらないかも。
もうすぐ私の魂は消えるから。
消えたらどこに行くんだろうね。
ちょっと楽しみだな。
今の辛い生活よりも絶対にましだよ。
そう断言できる。
何でかな。
怖くないの、私が消えるのも、知らない場所に行くのも怖くないの。
多分、いやきっと私の周りに細やかな太陽がいるからだな。
小さいけど、私に問ったらとても大きい太陽。
有難う。
これ、読んでほしいな。
でも、見せたくないし、どうしたらいいのかな。
最後に悩むのが貴方の事でよかった。
さようなら。
有難う、大好きだったよ。
でも、私のことは気にしないで。
絶対に幸せになって、頑張って生きて。
どんなことがあっても、自分を見失わないで。
私との一生の約束。
君が死ぬまで有効の約束。
さようなら、【石門 康汰】私が、最後に【愛した人】

涼架の本心が書いてあるのが判った。
でも、肝心な本心は最後のほうに集めてあり、前半部分や中央部はどうでも良いことが綴ってあった。
例えば、おにぎりの中の具材で一番好きな物、とか。
最後になるにつれて、大きな丸いしみが多くなっていた。
涼架の、涙。
そして僕の、涙。
二人の涙が混ざり合ってさらに大きな丸を描く。
その涙の跡は、綺麗だと思った。
純粋無垢な気持ちが混ざり合って共鳴して、遠く彼方に去ってゆく。
そしてその思いは、彷徨った最後に涼架の元へ届く。
今度はたっぷり十秒程目を瞑り瞑想に浸った。
涼架はきっと、他殺だ。
この文章は、自殺をする人の文章じゃない。
長年涼架の分を読み続けてきたら判る。
涼架が決めた文章はこんなに色々な所に彷徨ったりしない。
もっと出来るだけ簡潔明瞭に言葉を紡ぐ。
僕はまだ零れそうになる涙を堪えて二人を見た。
やっと発見したパソコンの液晶画面を食い入るように見つめる二人に、僕が考えて導き出した答えを告げる。

「涼架は、殺されたんだ。それで、根回してくれ。」

僕は、驚く二人に白のパソコンを指さして告げた。


59: フレット☆2018/04/02(月) 16:14:43 HOST:fl1-119-244-128-37.ngs.mesh.ad.jp
「何で、ですか。涼ちゃんのノートに書いてあったんですか。」

磨里の問いに僕は
かぶりを振りながら答えた。

「そう断言的なことが書いてある訳じゃないよ。でも、僕には判るんだ。」
「どうして?」
「涼架は、文を書くのが好きだった。涼架の作文はいつも、きっぱりとしていたよ。
それこそ、檀兼的な理由ばかりの、反論の使用のないような作文だった。
でも、このノートに綴られていた言葉は、まったくそうじゃ無かった。」
「断言的じゃない。遠回しってことですか?」
「そうだ。」

涼ちゃんらしく、無い。
そう言って磨里は俯いた。
目には大きな影が燈っている。
あの日、僕が磨里に涼架が好きだと伝えた時のような目だった。
十秒程を要してから磨里が顔を上げた。
そして何も言わず、無言で僕に頷く。
言葉にしなくても、磨里の頷きが同意であるという事が判った。
たった数日会話を交わし、思いを伝え合っただけなのにどうしてか涼架のように僕の中のすべてを洗い出してくれるような感覚が体全身を伝った。
姉妹だからか、それとも―

「・・・あ、これかっ。あるな、履歴。」

僕が再び長い考想に浸ろうとした寸前、沢口の言葉が僕の脳から先程までの考えをシャットアウトした。
磨里と一斉に沢口の方を向く。
置いてあったヒノキの椅子に腰を下ろして僕と磨里の意見の相互に依存している間もパソコンを操作していた沢口が手を止めていた。
そして僕たちのほうを見やり、今までにないくらいの笑顔を見せた。
見つけた、と顔一杯に書いてあった。
それを見て、どうしてか笑みが零れそうになった。
本当はもう、笑うほどの余裕はない。
自分を落ち着かせたくて、無理に笑おうとした。



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